リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


経営者インタビュー
株式会社バンテック 西澤正昭 代表取締役社長

第12回 共感の積み重ねが、組織を成長に導く

第12回 共感の積み重ねが、組織を成長に導く
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さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。

第12回は、自動車部品物流のリーディングカンパニー、株式会社バンテックの代表取締役社長の西澤正昭氏のインタビューをお届けします。 日産自動車のグループ会社として設立されたバンテック(当時横浜輸送)は、2011年に日立物流の100%グループ会社となりました。本インタビューでは、2020年4月に取締役副社長から社長に昇格された西澤社長に、社長就任後の変化と、組織を動かす上で大切にしていることなどについて、お話をうかがいました。


西澤 正昭氏 / 株式会社バンテック 代表取締役社長
1956年生まれ。1981年、早稲田大学政治経済学部卒業。1981年4月、日産自動車株式会社入社。2001年1月、同社 欧州日産会社 欧州収益改善チーム担当部長。2003年4月、同社 人事部人財開発担当部長 兼、日産人材開発センター社長。2004年4月、同社 人事部人財開発担当部長 兼 人事企画担当部長。2007年4月、同社 執行役員(CVP)グローバルアフターセールス担当。2011年4月、同社 常務執行役員(SVP)日本営業・マーケティング担当。2013年4月、ジヤトコ株式会社 副社長(EVP)人事・総務部門担当。2017年4月、株式会社バンテック 取締役副社長。2020年4月、同社 代表取締役社長就任。現在に至る。
写真提供: 株式会社バンテック

社長の口から出ていく言葉の重さ

社長に就任して一年が経ちました。課長と部長、部長と役員の違いもそれなりにありましたが、副社長と社長は大きく違うことを実感しています。何よりもその違いを実感しているのが、自分の発言の重さです。

副社長時代であれば「副社長はこう言っているけれど、社長はこう言っている」といったように、良くも悪くも自分の発言がより大きな発言に飲み込まれる可能性がありました。しかし社長となってからは、自分の発言がストレートに周りを動かす力として働きます。発する言葉の影響力の大きさが、すなわち責任の重さを表すわけですが、自らが発する言葉に基づいて周りが一斉に動き出すので、発言に対しては慎重にならざるを得ません。とはいえ、ぐずぐずと考えている時間があるわけではなく、即決しないと手遅れになる。この緊張感からくる精神的なプレッシャーは、思っていた以上に大きいと感じます。

そのプレッシャーは、自分の感情としても表れやすくなったと感じています。社内の会議で、周りのスピード感や考え方の視点に自分と大きなずれがあることを感じて、「そんなことをやっている場合じゃないのではないか?」と、イラッとすることが増えました。現在、エグゼクティブコーチをつけていますが、感情のマネジメントは大きなテーマの一つです。なぜなら、役員会での私自身の発言や態度は、役員だけでなく社員に波及していくものだからです。

それもあって、自分が全社に向けてメッセージを発信した後には、それがどのように受け止められたかについて、必ずアンケートを取るようにしています。年齢や考え方などが多様な社員の声を自分自身が聞くことは、社員との信頼関係を築くことにもつながります。

共感を得ることの積み重ねが、組織を動かしていく

提供: 株式会社バンテック

株主であり親会社の日立物流は、コロナ禍で生活用品の流通業務が急増しました。同時期、当社がメインとしている業界では取扱い荷量が減っていたこともあり、日立物流の支援として、200人の社員を送り出しました。当社の社員にとっては、すばらしい成長の機会にもなると考えたのですが、日産自動車グループとしての時代が長かった当社で、会社を超えての異動は非常に珍しく、抵抗感が無かったわけではありません。実際に、その頃に発信した社長メッセージのアンケートには、「会社としてのビジョンが見えない中での人件費削減策だろう」などといった回答がみられました。

そこで、そういった声に対しては次の社長メッセージで回答しつつ、異動先での経験が一人ひとりの今後のキャリアパスにどのようなメリットがあるかなど、未来を見据えての対話を会社全体で取り組みました。

その結果、幸い、希望退職者を募ることなく、業績は回復基調に転じ、社員の理解も得られてきたように思います。やはり、社員の共感を得ることが大事だと思いますし、そのためには頻繁な対話の積み重ねが非常に重要です。

業績回復後の次は、バンテックがこの先どのように進んでいくのか、道を示していく必要があります。会社の方向性が定まり、8割の社員が同じ方向を向き始めれば、そこに大きな力学が働き、組織が動いていくと思います。今は、早くそういう状態を作りたいと考えています。

プライドを持って新たな領域に挑戦

提供: 株式会社バンテック

自動車産業のグローバル化で、国内での自動車部品物流のトレンドが変わりました。期待された仕事を期待どおりに実直にこなすだけでなく、目の前の仕事から、これまでにない新たな付加価値を生み出し、さまざまな挑戦をし、そして一人ひとりが誇りをもって仕事をする。組織力を向上させるためにも、こうした社員の力をどれだけ引き出せるかが、社長としての私に試されている課題だと思います。

この先は、自動車部品物流をベースにしつつ、自動車業界で培った自分たちの強みを活かせる領域にビジネスを広げていくことが必要です。ただ、それはビジョンではなくあくまでも方向性なので、未来に向けたビジョンを創りつつ、社員と共有し共感を得るプロセスが必要です。

揺るぎない方向性としてあるのが、社員を幸せにする、お客さまに喜ばれ感謝をされる、パートナー企業さまから頼りにされる会社をめざす姿勢です。

また、物流業界が直面している社会課題は、なんといっても環境問題です。環境負荷削減などの取り組みを通じて、社会に、地球に貢献していると社員が実感し、誇りを持てることも、社員の幸せに直結すると考えます。

まずは、大事にしたい価値観として「現場主義」「チームワーク」「多様性を伴うオープンな対話」、そして「現状に満足せずに変革し続ける情熱」の4つを全社に根づかせていきたいと思います。そうした求心力をもって、持続的な成長を図ることが、新しいバンテックのプライドにもつながると信じるからです。

GratitudeとRespectで「礼」を尽くす

ビジョンを共有し、社員と信頼関係を構築していくためにも、社員との対話は欠かせない要素です。それは、メッセージを一方的に発信して実現できるものではありません。時間をかけて取り組む覚悟をもつ必要があると思います。そのためにも、まずは私自身がビジョンを語れるようにならないといけないし、役員が語れるようにならないといけません。リーダーから部下に広がっていく、ということが起こらないと8割の社員が同じ方向を向くことはないと思います。

また、相手の立場、相手の状況を理解した上で対話を進めないと、相互に理解し合うことはできません。感謝(gratitude)と敬意(respect)の気持ちで、礼を尽くす。この姿勢で、明日も一人でも多くの共感を得て、前へ前へと事業を進めていきたいと思っています。

この一年は、コロナインパクトの赤字から再起の一年として、改めて多くの方々に支えられていることを日々実感する一年でした。そうした方々のおかげで今があるという思いでいっぱいです。

私自身、日産自動車でキャリアを始めたのですが、バンテックに入社してからも、周囲の方々に支えられてきました。何をやるにしても、一人では何も実現できません。お客さま、身近にいる幹部や社員、労働組合、協力会社であるパートナー企業さま、それから親会社の株主さま、地域社会等々、信頼関係で成り立っている方々に、改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。そしてもちろん、私自身を支えてくれている家族、そしてコーチにも深く感謝しています。

本記事は2021年1月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: 株式会社バンテック提供


株式会社バンテック

自動車部品物流を担う企業として 1954 年に創業。現在は取扱い製品の幅を広げ、自動車部品だけではなく、様々な業界の貨物を取り扱い、日本国内はもとより世界に広がるネットワークで輸送事業を行っている。
日立物流グループの中核企業として常に時代とともに発展、先端技術を活用して新しいサービスを創造し、環境に優しい、お客さまやパートナー企業さま、そして当社社員を含めたすべての人が幸せになる企業をめざす。

株式会社バンテック


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