リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


経営者インタビュー
株式会社wash-plus 高梨健太郎 代表取締役社長

第17回 「仕組み」で生産性を向上させ、社員へと還元していく

第17回 「仕組み」で生産性を向上させ、社員へと還元していく
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さまざまな業界のトップに、経営に関する哲学をお聞きする経営者インタビューシリーズです。
今回は、日本初の洗剤不要のコインランドリー「wash+」を千葉県中心に全国で30店舗展開し、「IT賞(IT最優秀賞)」や「日本サービス大賞(優秀賞)」「ちば起業家大賞(千葉県知事賞)」など、数多くの受賞歴を持つ株式会社wash-plusの高梨健太郎代表取締役社長のインタビューをお届けします。洗剤要らず、精算機要らずといったさまざまな革新を生み出す思考や、リーダーとして大切にしていることなどについて、お話をうかがいました。


高梨 健太郎氏 / 株式会社wash-plus 代表取締役社長
1991年、市川商工会議所入社 記帳専任職員に従事。その後、経営指導員として主に公的融資制度の申請指導及び斡旋、経営困難な会社を支援する経営安定特別相談を担当。2000年、中小零細企業にITを普及させるためNTTと連携し、普及事業「ミレニアムプロジェクト」を促進。2003年、株式会社いちかわケーブルネットワーク入社 経営企画。2004年、株式会社協同住宅入社。2007年株式会社協同住宅 代表取締役就任。2013年、 公益社団法人浦安青年会議所 理事長就任。2015年、株式会社wash plus 代表取締役就任。2016年、株式会社AssetBox 代表取締役就任。2017年株式会社山本製作所 顧問就任。
写真/市吉茉耶

無駄な経験など何一つない。とにかく行動を起こす

僕は基本的に無駄な経験など何一つないと思っています。行動を起こして失敗したとしても、その経験は自分の血肉となりますから失敗することにも積極的。「wash+」が生まれたヒントも、育児経験から得たアトピー性皮膚炎に関する知識からでした。世の中には衣料を洗う洗剤にも、気を遣っている人がいるということを知ったんです。

当時の僕は、新事業としてコインランドリーを作ろうと、徹底的にビジネスモデルを調査・研究していました。コインランドリーを一目見れば、日本に3社あるランドリーメーカーのどの系列か、サービス内容も含めて瞬時にわかるほどになっていましたが、ランドリー機種の違い以外に、どう差別化を図るべきか模索していたのです。育児から得たヒントをもとに、誰もが安心して洗濯できるコインランドリーにするには...。

この解が得られずに諦めかけていたとき、「水で油が落ちる」と書かれた1枚のポスターを目にします。とにかくすぐ行動を起こすタイプの僕は、即座にそのメーカーに電話しました。「その水を洗濯でも使ってみたい」。実験用に20L売っていただいたら、今度は即ランドリーメーカーとの交渉です。唯一、僕の実験に関心を示してくれた株式会社山本製作所さんとともに、そのアルカリイオン水を使う実験を始めると、カレー、ケチャップ、ソースと、一晩寝かした汚れも非常によく落ちる。アルカリイオン水を使うのはかなりのコスト高となりましたが、その課題もなんとか克服し、1号店を開業するに至りました。

「可能性の広がる選択」をする

誰もがいろいろと新しいことを発想すると思いますが、そのアイディアが次のアイディアを生み出すようなものでなければ、僕はそれを選択しません。僕が選択するのは、常に可能性を秘めている発想です。たとえば最初に「洗剤を使わない」ということを選択したことによって、アトピー性皮膚炎や過敏症の方も安心して衣服を洗える「人にやさしい」洗濯を実現しましたが、それは結果として、排水も少量かつきれいで、においもしない、「環境にやさしい」洗濯へと広がり、SDGsが目指す方向性とも合致していたのです。

提供: 株式会社wash-plus

また、コインランドリー機器とスマートフォンアプリ「スマートランドリー」を連動させたのも可能性の広がる選択でした。今では約10万人の方にご利用いただいているこのアプリも、コインランドリーが無人だからといってお客様に割引ができないというのはおかしいのではないか、という疑問から着想して開発しました。当時、同業他社は集中精算機を作る方向で動いていたのですが、その選択はビジネスモデルとして可能性に広がりがないように見えたんです。思い切ってスマホアプリと連動したランドリー設計に舵を切ったことで、スマホで個人認証をして、スマホ決済・割引サービスの適用はもちろん、盗難防止用ロック、空き状況の確認、洗濯の終了通知など、どんどんとお客様が享受できるサービスの幅が広がりました。

それだけではありません。蓄積されたデータを分析することで、時間帯や天候条件から混雑予想を立てることができ、需要に応じて価格変動をさせるダイナミックプライスも実現できるようになりました。また、ランドリーの機器操作を、ボタン式ではなく敢えてタッチパネル式にすることで、価格帯に合わせてタッチパネルの色を変え、お客様に今の時間がどの価格帯でのサービス時間なのか、一目でわかっていただけるようにしました。一つの発想から、どんどんと可能性が広がっていく。このワクワク感、まだ見ぬ世界を見てみたいという気持ちが、僕が仕事をする上での大きな原動力となっています。

「会社」が「社員」の上に立つことはない

同時に僕は、このワクワク感を、社員のみんなにも抱いてもらいたい。社員に「こんなこと、普通だな」と思われてしまったら、それは僕に落ち度があると思っています。当社は小さな会社ですから、先頭に立つ僕自身が背中を見せて引っ張っていかないといけません。「この人にだったらついていける」。社員にそう思ってもらえるように、さながら漫画「キングダム」の心意気です。ですから、ビジネスコンテストしかり、IT賞しかり、僕が大勢の場でプレゼンする機会があるときは、必ず社員を会場に呼びます。そこで講演する時の僕の意識は、審査員ではなく、社員に向かっているといっても過言ではありません。さらにそこで受賞することができれば、それは社員と社員のご家族に、「この会社に勤めていて良かった」と思っていただけるきっかけになるのではないか。当社のような小さな会社に入って、僕とともに納得して働いてくれる社員。そしてそれを認めてくださるご家族は、僕にとっては宝物なんです。

写真/市吉茉耶

だから、僕が社員に常に問うのは「最近どう?」。敢えてカジュアルな聞き方をしていますが、実際に知りたいことは、「会社に対して何か不満はないか」です。社員にとって一番大切なのは、自分や家族です。仕事なんて、絶対にその次に決まっているんです。サラリーマンは、何のために働いているのか。仕事のために仕事している人なんて、いないでしょう?自分や家族のためなんです。だから、「会社」が社員より上に立つことは絶対にない。それを経営者は忘れてはいけません。

「一年前の自分に勝てるか」を自らに問う

一方で、僕が僕自身に問うのは、「一年前の自分に勝てるか」。残念ながら、思い立ったらすぐ行動するスピード感は、現在、20年前の僕に負けています。でも、来年の自分が今の自分を見たときに、発想や考え方のスケール感は絶対に負けていたくない。今年5月にオープンした「Wash+明海店」なんて、コインランドリーにテレワークブースをつけたんです。皆さん、そこでウェブ会議やっていて、おもしろいですよ。こんな風に、どんどん新しいことを仕掛けて、洗濯の可能性を広げていきたいですね。

提供: 株式会社wash-plus

また、2016年に「ちば起業家大賞(千葉県知事賞)」を受賞した時に講演で話した「千葉から日本へ、日本から世界へ」は、僕が千葉県と交わしたお約束だと思っています。「千葉から日本へ」は実現しつつありますから、「日本から世界へ」の部分もしっかりとやっていきたいと思います。世界を見ると、川で洗濯している地域や、硬水での洗濯で苦労している地域など課題はいろいろあります。世界中、洗濯の需要は常にありますから、必ず「世界へ」の約束は実現したいと思っています。

ただ、事業展開エリアが拡大しても、それと比例する形での組織の拡大は考えていません。会社はなるべく少数精鋭で求心力を保ちながら、生産性は人ではなく、ITなどを活用して「仕組み」で向上させる。そして、社員に給与として還元していきたいですね。

本記事は2021年6月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
表紙写真: 株式会社wash-plus


株式会社wash-plus

2013 年創業のベンチャー企業であり、コインランドリー業界において、新事業の企画・開発から、店舗経営・運営支援までを総合的に手掛けています。同年に世界初でアレルゲンフリーの洗剤レス洗濯を可能にするコインランドリー「wash+」の 1 号店を実現し、現在までに全国 30 店舗を展開しています。 また、これからの社会に求められる新しいコインランドリー像として、"今まで無くて当たり前であったものを、あって当たり前になる未来を創る"をコンセプトに IoT コインランドリーである「スマートランドリー」を企画。小規模ベンチャーながら、外部組織との密接な連携を築くことで高度なシステムの実現に至りました。リリース以降も多機能化を進め、現在スマートランドリーは北海道から九州まで170店舗以上に導入され、更に拡大しつつあります。

株式会社wash-plus


※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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