Coach's VIEW

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『自責』で考えさせる

先日ある大手食品会社の管理職約20人を対象にコーチング研修を実施しました。
2日目の朝、昨日を振り返って何か質問はありませんかと参加者に問いました。

1人の参加者がすかさず手を上げました。
 
「コーチングが大事だというのはわかりました。
でもね、いくら自分達が部下の話に耳を傾け、彼らのよいところを認め、
自発的な行動を促したとしても、上司があれじゃあ、会社は変わらないですよ。」

聞くと、彼の上司は何事につけてもああしろ、こうしろばかりで、
ほとんど部下の意見に耳を貸そうとしない。
指示命令型マネジメントの権化のような人だと言います。
 
彼の不満は他の参加者に飛び火し、日頃抑えていた不満が噴出しました。
「そうだよな、トップマネジメントがコーチングしようという気がないんだから、
幾ら俺たちががんばったってしょうがないよ。」
「そうだ!そうだ!」
部屋は蜂の巣をつついたような大騒ぎになりました。
 
私はじっと参加者一人一人の発言に耳を傾けていました。
1人の参加者が吐き捨てるようにいいました。

「鈴木さん、部下をどうコーチングするかもいいけど、
どう上司を扱うかも教えてくれないと、やっぱりだめなんじゃないの。
どうしたらいいのよああいう上司は?」
他人事のようなその言い回しを聞き逃すことはできず、
私はそれまでの穏やかな表情を硬くしめ、真っ直ぐにその参加者を見据えて言いました。
 
「私の会社じゃないですからね。あなたの会社ですから。」
 
きっと私が何か「正しい」答えを返してくれると思っていたのでしょう。
その参加者は予想外の答えに鳩が豆鉄砲を食らったような顔になりました。
私はだめを押すように強い口調で言葉を続けました。

「どうするんですか、一体?誰かがなんとかしてくれるって思ってるんですか?」

それまでの騒ぎはどこへやら、部屋はシ縲怎唐ニ静まり返りました。 
しばらく沈黙が流れました。
1分ぐらい経ったでしょうか、沈黙を破って、一人の参加者が口を開きました。
 
「俺たちがなんかしないとだめだってことだな。」
横に座っていた一人が呼応しました。「だな。」

コーチングは何であるかということについて、色々な言葉で喧伝されていますが、
一つの揺るぎない定義は、「相手に全てを『自責』で考えさせるための手法」だということです。
あの人のせいで自分はこうなったというのを決してコーチは受け取りません。
「他責」で考えている限り解決策は生まれようがないですから。
よく「コーチングは仏のアプローチだね」などと言われます。
相手を認めるし、相手の話に耳を傾けるし。
が、コーチはただ優しい笑みをたたえただけの仏様ではありません。

時には相手のために厳しい表情をするときもあるわけです。

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