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3つの解決案
コピーしました コピーに失敗しました先日、NHKの「難問解決 ご近所の底力」というバラエティー番組の収録がありました。
番組の題材となったのはある地方銀行の支店長、Nさん。
業績はいいが、あまりにも部下を怒鳴ってばかりいてこのままではいけない、なんとかしたいという「難問」に対して、実際に成功している職場の例を具体的にあげ、3つの解決案をNさんに提案するという番組です。私はその「解決案」について、コーチングという視点から解説を加えるという役割で出演させていただきました。
スタジオにある大きなスクリーンに、支店の様子が写されます。
Nさんが怒っている。かなり過激な言葉が連発されています。部下は何も言い返せません。
VTRが終わって感想をNさん本人に聞きます。
「正直言ってこれは怒りすぎ、やりすぎだね。でもとまらないんだよね」
まわりは大爆笑です。
とても正直で、熱血、愛情あふれる人柄を感じました。今度は部下に感想を聞きます。
「いつもはこんなもんじゃないです。これはカメラがまわってるから、かなりセーブしてますよ」
また大爆笑。部下からも正直な感じが伝わってきます。
しかし、これだけ怒鳴ったり、ものすごい言葉で罵倒されたら、部下としてはたまったものではありません。
言いたい事があるなら正直に言え! 反論や意見があるなら俺に向かって来い! 俺の若いときは......これでは部下が萎縮してしまうのも無理はありません。
Nさんは確かに怒鳴っているし、ものすごい言葉で罵倒している。
けれども、その土台に支店を良くしたい、部下を成長させたいという愛情も同時に感じるのです。
部下も根底ではそのことをわかっていて、怒鳴ることしかできない不器用なNさんのことを信頼している様子がうかがえました。
もしこのNさんが、怒鳴る以外の方法で部下とコミュニケーションをとる方法を手にすれば、さらに業績はあがる。部下はのびのびと仕事ができるようになる、支店の雰囲気もよくなることは誰が見ても明らかでした。
さて、紹介された事例は、
部下をしからずに、解決策を引き出す(日産自動車の課長、Tさん)
部下の不満を聞きだし解消する(フォード東京の店長、Tさん)
仕事以外の部分についてお互いに知る(三重県庁のマネージャー、Kさん)
この3つの事例の根底にあるのは、「聞く」というコーチングにとって最も基本となるスキルでした。
部下への愛情あふれるNさんが、「聞く」スキルを身につければ、今以上の成功は間違いありません。
しかし、これからが、Nさんの本当の勝負だと思います。
なるほどと思っても、実際にそれを実行するのはなかなか難しいものですから。
Nさん、いつでもコーチします。
そしてまず最初に、なぜ怒るのか、怒ることの目的は何なのか、を聞いてみたいと思っています。
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