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認める
コピーしました コピーに失敗しましたコーチングのワークショップで次のように聞くことがあります。
「普段みなさんは、人と会った時に、どのくらい自分が『認められる』ことに意識を向けていますか? どのくらい目の前の人を『認める』ことに意識を向けていますか?」
全体を10としたら、「認められる」が何点で、「認める」が何点になるか点数を付けてもらいます。
これまでの平均点は、「認められる」が7点、「認める」が3点というところでしょうか。
平均的な7:3の配分で点数を付けた人の多くは、
「ああ、その程度しか他人のことを考えていないな......」という顔をされます。
なぜこのような点数付けをしてもらうかというと、どうも「認められる」ことを第一に考えている人よりも、「認める」ことを第一に考えている人の方が、結果として人を「動かしている」ことが多いからです。
そのことを痛感した「イベント」が最近ありました。
弊社のトレーニングを企業に紹介してくださっている会社さんがあります。
その会社さんにAさんという40代前半の女性がいます。
彼女は3つの会社を渡り歩き、15年近く営業をしていますが、その間常にトップ営業マン(ウーマン)としての地位を堅持してきました。
後半の5年は娘さんがいて、10時から16時までという普通より短い勤務時間であったにもかかわらずです。
そのAさんと先日某都市銀行に営業に行きました。
ビルの前で待ち合わせしたのですが、まだ50メートルくらい離れているのに、こちらを見つけるなり満面の笑みを浮かべて走り寄ってきてくれました。
「鈴木さん、今日はありがとうございます!」
さっと、手を伸ばしたかと思うと、
「おかばん持ちますから!」
エレベーターに向けて歩き出しても、
「そこ段差がありますから、気をつけてくださいね!」
まるでホテルマンに案内されているかのようです。
受付の女性を見るなり、彼女は走り寄りました。
「今週は2回目ね! お会いできて嬉しいわ!」
とても大銀行に営業に来たとは思えない、アップテンポな声なのです。
先方の担当者に私を紹介するときも、
「鈴木さんです。鈴木さんの話しを聞いているとほんとたくさんの感動があるんですよ!」
私の存在価値を思いっきり高めてくれます。
私が担当者と話している間も、彼女は傍らに座ってじっと視線で私を応援してくれていました。
ふと目が合うと、「いい感じですよ!」そう目で語りかけてくれているかのようでした。
営業が終わった時間は予定を15分ほど過ぎており、急がないと次のアポイントに間に合わないかもしれないという状況でした。
Aさんは、
「すみません、こんなに遅くなっちゃって!」
繰り返し言いながら駅に向かって私を先導してくれました。
駅につくなり、窓口の駅員さんに、
「田端駅までは何分ですか!」
「鈴木さん、快速で10分ですって、間に合いますね!」
ホームではけたたましくベルが鳴っていました。
Aさんは突然重い荷物を両手に持ちながら、階段を全速力でかけあがりました。
そして車掌さんに、
「今来ますから! ちょっと待っててください!」
意地でも発車させないぞと言わんばかりに、ドアを押さえて私の到着を待っていてくれました。
「鈴木さん、本当に今日はお会いできて嬉しかったです!」
窓の向こうで彼女は電車が見えなくなるまで手を振ってくれました。
Aさんと過ごした2時間、私は承認のシャワーを浴びました。
体はホットになり、気持ちはとても軽くなりました。
「あそこまでやらないとだめなんだな、本気で人を動かそうと思ったら」
つり革につかまりながらそう思いました。
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