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チームワークのモデル
2004年01月21日
今職場でチームづくりをする際に困難なことは、モデルとなる例があまり身近にないということです。
そこで、卑近な例としてスポーツを例にとり、日本であれば野球やサッカー、ラグビーなどのチームをモデルにします。
しかし、スポーツにおけるチームワークが、本当に会社組織や会社内のチームに適応するかというと疑問が残ります。
その理由のひとつは、スポーツにおけるチームの場合はチームが負けたとしても、個人の成績が評価されることがあるという点。たとえばペナントレースでチーム自体が最下位であっても、三冠王やホームラン王が生まれ、注目されます。
起死回生の働きをする社員が会社を救うという例はありますが、基本的には会社の場合、チームが負けるということは、全ての選手(そのチームのメンバー)の存在基盤がなくなるということを意味するわけですから、会社組織ではこのようなことはありえません。
もうひとつの理由は、スポーツのチームは勝ったり、負けたりすることができるけれど会社は負けるわけにはいかないという点です。
会社は、常に勝ち続ける、存続するという使命を持っています。
また、シーズンオフにチームワークに貢献した選手の働きは、契約更新の際にどれだけ評価されるのでしょうか?
ここに北海道大学助手らの研究に関する新聞の記事を紹介します。
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「働き者」とされながら、ほとんど働かない「働きアリ」がいることが北海道大学大学院の長谷川英祐助手らの研究でわかりました。
国内の森林などにいるカドフシアリ約30匹ずつ3つの集団を室内の人口の巣にうつして、昨年の春から約5ヶ月の間観察したところ、「えさをとりに行く」「たまごや女王アリをなめてきれいにする」「ごみをすてる」などの仕事をほとんどしないアリが、どの集団にも約2割(30匹あたり6匹)ほどみられたそうです。
ところがそのアリたちを取り除くと、よく仕事をしていたアリたちの働きぶりも、少しにぶったといいます。
──────(朝日小学生新聞より)
スポーツの場合、チームワークそのものよりも、個人の成績に目がゆくようになりますが四番打者だけを集めたチームが必ずしも優勝するわけではなく、スーパースターが一人もいないようなチームが優勝することも多々あります。
振り返ってみると、記録を残さないのに印象に残る選手もいます。直接そういう話を耳にしたことはありませんが、チームを牽引したり、チームの雰囲気を創ることに長けた選手がきっといるのだと思います。そういう選手は、たとえ生産性という点では見劣りしたとしても、チームに必要な人材なのでしょう。
ところが現実は、残念ながらそういう人を評価する基準がないために、どうしても成績のいい選手、社員に目が行ってしまいます。会社はチームワークによって成り立っているという現実がありながら、どうしても個人成績に注目するようになる。
こういう傾向は、職場でチームを形成しようとするときには、マイナスに働くことがあります。それが高じると、社内競争が激しくなります。激しい社内競争は、最終的に社内のチームワークを壊してしまうことになります。
また、ときどき不思議に思うのですが、野球の解説者が「チームバッティングに徹する」と言うことがあります。それはバントすることなのか、または、ホームランを打ちたいときにヒットを打つことなのか、それとも、犠牲フライのことなのでしょうか、いずれにしても、そこには「チームのためにすること」は、自己犠牲を強いるようなものだというイメージがあります。また、「チームワーク」とは、外敵や競争相手が出てきたときに生まれるものだというイメージもあるかもしれません。
しかし本来求められる「チーム」や「チームワーク」とは、自己犠牲に基づくものではないはずです。自己犠牲や他との対抗意識がチームワークをつくるのではなく、チーム内のメンバー構成やチームリーダーの働き、チームメンバー間で培われる信頼関係やコミットメントがチームワークに影響するのです。
そしていまや、チームワークは会社組織にとっての資産として、とらえられるようになってきています。これまで、会社の資産は「ヒト、モノ、カネ、知的資産」などに集約されてきましたが、ここに来て、組織内の人間関係も「ソーシャルキャピタル(社会資産)」として評価されるようになってきたのです。
「ソーシャルキャピタル」については次回続けたいと思います。
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