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コミュニケーションの全責任を負う
コピーしました コピーに失敗しました今週からスタートしたコーチ・トレーニング・プログラム(以下、CTP、現在のコーチ・エィ アカデミア)の新しいモジュールの中に次のようなレクチャーがあります。
コミュニケーションにはバーバル(言葉)とノンバーバル(言葉以外)があります。
伝わっているコミュニケーションを全部で100%とすると、バーバルが7%、ノンバーバルが93%(話し方-口調、抑揚、語調の強弱などが38%、ボディーランゲージ-表情、身振り手振り、姿勢などが55%)の割合だといわれています。
言葉の意味そのもののインパクトはたった7%にすぎません。
(CTP(現在のコーチ・エィ アカデミア)モジュール「コーチング・フロー」より)
先日、ノンバンク系の中堅企業でコーチング研修を行いました。
その中でこのデータを紹介し、話の内容だけでなく、声のトーンや態度も含めて、コミュニケーションの全責任を自分が負うことがコーチングのスタートだという話をしたところ、マネージャーのAさんから反論がありました。
Aさんは地方都市で支店長をしています。
「桜井さん、それは違うんじゃないの。仕事してる上では内容がすべてでしょう。言い方が悪い、顔が怖いっていうのは確かにあるだろうけど、そんなことよりも。言ってることの妥当性の方が何倍も大事でしょう。声とか顔つきを問題にされたらかなわんなー。大切なのは何を話したかという内容でしょう。あとは受け取る側の問題ですよ。僕は間違いだと思ったら相手がどう思おうと間違いだと言いますからね。それが僕のポリシーだから。言いたいこと言うから会社ではまわりから煙たがられてると思うんですよ。それはわかってる。でも、僕は会社のためだと思って、言いにくいこともはっきり言うわけですよ。昨日も会議でそういう場面がありました。みんな黙っちゃったけどね。それで相手がどう思おうとそれは相手の問題でしょう。桜井さんこの考え方は、間違ってますか?」
「間違ってるかどうかはわかりませんが、ひとつ質問してもいいですか?」
「どうぞ」
「Aさんにとっての会議の目的は何ですか?」
「建設的なディスカッションをして、会社をいい方向に向かわせること」
「その目的はどの程度達成していますか」
「100点満点で30点」
「ずいぶん厳しい評価ですね」
「僕がいくら発言しろ、いいたいことがあったら言えといっても、ほとんど出てきませんからね」
「なるほど。原因は何ですか?」
「反論できないようなこと言うからかな」
「Aさんの意見が正しいからですか?」
「いや、反論するのがこわいんじゃないのかな」
「どうしてですか」
「うーん? 僕の言い方の問題ってこと? 怖かったとしてもそれを越えて反論してくるのが筋なんじゃないの?」
「ということは、建設的なディスカッションをするよりも、怖さを乗り越えさせることの方が大切ということになりませんか?」
「いや、だから会社というのは目標達成のためにやるのは当たり前なんだから、それは相手の受け取り方の問題なんじゃないの? 桜井さん、社員というのはそういう同意の下に働いているんじゃないんですか?」
「Aさんのおっしゃってることは間違っていないと思いますよ。でも、周りから見れば怖すぎて、発言しにくいってことはあるんじゃないのかなー? こうやって話してても怖い感じありますよ」
「確かにね。多少それは感じてますけどね。つい声が大きくなっちゃうんだよね。桜井さん、どうしたらいいんだろう?」
「どうしたらいいと思いますか?」
「うーん?」
「Aさんの目的である建設的なディスカッションを生むためにはどうしたらいいと思いますか? 部下の受け止め方に委ねるのではなく、Aさんがつくりだすとしたら?」
「うーん? 黙るってことかな。部下が発言するまで黙っている」
「なるほど。ほかにもアイデア出してみましょう。どんなことができますか?」
「大きな声を出さない。バカやろー! とかアホ! とか言わないようにする」
「それは大事ですね! バカやろーと言われたら、僕も発言しないだろうなー。ほかにもありますか?」
「思い浮かばないな」
「そうですか、今あげた中で、実際にやるとしたらどれをやりますか?」
「やれるとしたら<黙る>かな。部下が何か言うまで黙っている」
「Aさんが黙って部下の発言を待つことができれば状況は良くなるということですか?」
「少しは良くなるんじゃないかな」
「そのとき、どんな表情をしていたら部下は発言しやすいと思いますか」
「あんまりしかめっ面じゃ良くないだろうね。少しは優しそうな顔を作らなきゃいけないのかな。でも、そんなに急には変えられないな」
「そうですよね。でもそれができたらなおいいですよね。Aさん、ここまで話してみてどんなことを感じていますか? 最初にAさんは、受け取る側の問題だと言いましたよね。そのことについてはどうでしょう?」
「その考えは今でも変わりません。でも、部下のせいにするだけではなくて、自分の方から何か試してみてもいいかなと少しは思ってます」
―今、相手から返ってきている反応が、自分のコミュニケートしたことである―
これはコーチングのもっとも基本的な考え方です。
何を言ったかではなく、相手に伝わったことが自分の伝えたこと。
つまり、コミュニケーションの全責任を自分が持つということ。
言っている内容だけでなく、言い方、顔つきも含めて、相手にどのような影響を与えるのかに責任を持つ。
そのスタンスを持つことがコーチングのスタートといえるでしょう。
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