Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


ICFが定める『コーチの倫理規定』について

ICFが定める『コーチの倫理規定』について | Hello, Coaching!
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

1月15日から、カナダのケベック・シティで行われた、2004年度ICF理事会に参加してきました。

理事会は毎回、その年に開催されるICF大会(International Coach Federation Conference)の会場にて行われます。

昨年のICFの大会でも次年度のプロモーションを兼ねて、ケベックのコーチがフランス語訛りの英語でさかんにアピールしていましたが、この町を見ることをひとつの理由として、ぜひ、今年11月4日は、この大会に、日本から多くの方に参加していただきたいと思います。

さて、今年の理事会では、ひとつのハイライトがありました。それは、ICFの倫理コミッティの委員長が、理事会に倫理についてのプレゼンを行いたいとやってきたことでした。

ICFでは、会員申込み、認定資格の申請、コーチ育成機関の申請など、あらゆる申請を行う際に必ず「ICFの倫理規定」に同意することが求められます。それだけ、「コーチとしての倫理」を確実に認識し守ることが重要視されていると言えるでしょう。

理事会に参加した倫理コミッティの委員長も、新理事会のメンバーがきちんと倫理規定を理解しているかどうかを確認しにきたのです。この倫理コミッティは、極端な話、秘密警察のようなもので、具体的な役割としては、コーチングを受けたクライアントから、コーチから受けたコーチングに関するなんらかの申し立てを受けた場合、審査を入れて判断することができるという権利を持っています。

審査に入るほどのケースは1年に1回あるかないかですが、そこまでして、コーチの倫理を守ることを大切に思う姿勢に学ぶものがあります。

「倫理規定」が生まれた背景ですが、もともと、アメリカでは、コーチングは「パーソナルコーチ」つまり、個人としてコーチ業を営む人たちによって発展してきた経緯があります。

いまでは、「コーポレートコーチ」など、対企業ベースで活躍するコーチが多数を占めるようになりましたが、個人対個人へのコーチングが盛んだった当初、誰かひとりでも問題ある行為をした場合、コーチという職業そのものが存続の危機に晒される可能性があったのです。

国家試験による認定もありませんから、コーチたちが自分で「自主的に規律を守る」必要があったのです。それだけに、倫理規定にはコーチとして何を守ればいいか具体的に示唆してあります。

そこで、「ICFが定める倫理規定」をご紹介します。

これは、個人として活躍するコーチだけでなく、コーポレートコーチを営む人も、一度は目を通し、同僚コーチや、自分のクライアントに対して、コーチングの倫理について話す機会を持っていただきたいと思います。

-----------------
ICFの倫理規定
-----------------

part1. ICFのコーチングの理念

国際コーチング連盟は、クライアントが自らの私生活および(または)職業生活のエキスパートであることを尊重したコーチングを支持し、どのクライアントも創造的で機知に富み、必要な資質をすべて備えていると信じています。この観点に基づき、コーチの役割は以下のとおりであると考えます。

1.クライアントが達成しようとする目的を発見し、明確にし、協力する
2.クライアントの自己発見を促す
3.クライアント自らが解決策や戦略を生み出すよう導く
4.クライアントに責任を持たせる


part2. ICFのコーチングの定義

職業としてのコーチングは、クライアントが生活、キャリア、仕事、組織においてすばらしい成果を生み出す手助けをする、継続的な仕事上の関係です。

コーチングのプロセスを通じて、クライアントは知識を深め、能力を高め、生活の質を向上させていきます。

ミーティングでは毎回、クライアントが会話のテーマを選び、コーチは耳を傾け、意見や質問を与えます。

この交流によって、物事が明確となり、クライアントに行動を起こさせるようになります。

コーチングは、選択肢に焦点を合わせて意識させることにより、クライアントの進歩を促進させる働きをします。

また、クライアントが現在どの状態にあり、将来到達したい状態に至るために何をしようとしているのかという点に集中します。

それは、その成果が、クライアント自身の意志、選択、行動にかかっており、コーチは自らの努力とコーチング・プロセスの活用がそれを支えていると認識しているからです。


part3. ICFの行動規範

職業上の行為全般について

1.私は、職業としてのコーチングにふさわしい振る舞いをし、職業としてのコーチングに対する一般の理解や支持を損なう行為は一切いたしません。
2.私は、クライアントとの関係におけるすべての契約を守ります。守秘義務、経過報告、その他の事項を含む明確な契約をクライアントと結びます。
3.私は、他の人々の努力や貢献を尊重します。
4.私は、私自身の資料を作成する際に、他の人々の創造的な著作を尊重し、私自身の著作であると偽ることはありません。
5.私は、ICF会員の連絡先情報(電子メールアドレス、電話番号など)をICFに認められている使用範囲でのみ使用します。


クライアントに対する職業上の行為について

6.私は、私自身のコーチング能力のレベルを正確に認識し、コーチとしての資格、技術、経験を誇張することはありません。
7.私は、クライアントがコーチングの本質および私との契約条件を確実に理解するようにします。
8.私は、コーチング・プロセスまたはコーチとしての私から得られる成果について、意図的に欺いたり、不当な主張を行ったりしません。
9.私は、私のクライアントまたはクライアント候補者に対し、誤解を招く恐れのある、または私の能力を超えた情報やアドバイスを与えません。
10.私は、クライアントが私とのコーチングからこれ以上得るものがなく、私以外のコーチまたは別の手段に頼ったほうがいいと思われる場合に、それを認め、クライアントにその変更を行うよう促します。


守秘義務・プライバシー

11.私は、クライアントが認めた場合、または法によって求められる場合を除き、クライアント情報の秘密を守ります。
12.私は、クライアントとしてもしくは照会先として、クライアントの氏名やその他のクライアント特定情報を公表する前に、クライアントの同意を得ます。
13.私は、私に報酬を支払う人に、コーチングを受けている人の情報を伝える前に、その人の同意を得ます。


利害の対立

14.私は、私自身の利害とクライアントの利害が対立しないよう努めます。
15.実際に利害の対立が生じたり、対立の恐れが生じた場合は、私はそれを隠さず明らかにして、クライアントにとって一番よい対処の方法をクライアントと検討します。
16.私は、クライアントに関する照会やアドバイスに対して私が第三者から受けると予想される報酬を、そのクライアントに明らかにします。


part4. ICFの倫理規定

プロのコーチとして、私はコーチングのクライアントや同僚、一般の人々に対する私自身の倫理的義務を認め、それを守ります。

私は、ICFの倫理規定に従い、人々を独立した平等な人間として尊厳を持って接し、私がコーチングを行う人に対しこの規定を応用することを誓います。もし私がこの倫理規定もしくはその他のICFの倫理規定に違反した場合、ICFが自己の裁量で私にその行いの責任を負わせることに同意します。

また、違反した場合のICFに対する私の責任には、ICFの会員資格や認定資格の取り消しが含まれることがあることも承知しています。

この記事を周りの方へシェアしませんか?


※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

国際コーチング連盟(ICF)

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事