Coach's VIEW

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コーチング人口1千万人を夢みた男

「世界中の1千万人の人がコーチングを体験をしたら、それは、
コーチ業界にどのような影響を与えるだろう?」

この問いを投げかけた人がいます。その名前はトマス・レナード。
アメリカでコーチ業界を大きく発展させた中心的な人物です。
このメッセージは、2002年の8月にレナード氏が配信するメールニュースに流れました。
その答えとして彼が提起したのは次の3つです。

1.「コーチングって何?」と聞く人がいなくなる
2.コーチングの効果を実際に体験する人たちはその有益性ゆえに一生涯コーチを雇うようになる
3.コーチが職業として世の中に認められるようになる(認定制度が確立される)
これらを実現するために、レナード氏は、数多くのプロジェクトを手がけ、
コーチング業界を世の中で認知させるために勢力的に取り組んでいました。
私が初めて彼に会ったのは、1999年にアトランタで行われたコーチの大会。
当時レナード氏が取り組んでいたのは、
「コーチ業界を担うリーダーたち」をテーマに、
各国のコーチたちをホテルの部屋に招待し、
インタビュー形式による撮影を行うというものでした。
弊社の伊藤守もそのインタビューを受けた一人であり、私は通訳として参加しました。
ソフトでいながら、意志の強さを感じさせる鋭い視線が今でも鮮明に思い出されます。

レナード氏の情報収集力と整理力は尋常でなく、同時に、
それらを惜しみなく分かち合う精神も常識を超えています。
それを形にしたのが2001年に創設されたコーチングのポータルサイト、
「コーチヴィル- Coachville」です。
このサイトは、コーチたちと、コーチングに興味がある人たちに、
コーチングの「リソース(源)」をいつでも
インターネットから簡単に入手できるように用意されたもので、
コーチングのセッションで使える何百種類ものツール、ドキュメント、ヒント集や、
過去に行われた電話会議のオンラインクラスの録音、
Eカード、ウェブに貼るバナーなどが提供されました。
2002年までの2年間、誰でも無料で利用できたというのも仰天するようなしかけです。
これも1千万人プロジェクトを達成するための第1フェーズだったと言えるでしょう。

このコーチヴィルとコーチ・トゥエンティワンが提携を結んだのが2002年10月。
日本のコーチングの現状に沿ったコンテンツの翻訳から始まり、現在では、1000人近い会員の方が利用されています。
コーチヴィルのコンテンツを翻訳する際にそれこそ何百ものツールやドキュメントを目にしました。
それらからは、世界各国のコーチたちによる「私たちはこれを使ってうまくやっている」という自信と誇りが伝わってきました。
そのコーチの心意気を込めるために、
翻訳者も自身がコーチとして活動している人に依頼しました。

コーチヴィルのウェブサイトは日本のほか、スペイン、イタリア、アイルランドにもあり、それぞれの国らしいコーチング事情を垣間見ることができるのが興味深いところです。

残念なことに、レナード氏は昨年2月に47歳で急逝しました。
そのニュースはショックとして業界を駆け抜けたのですが、
コーチングを広めるために文字通り、命を懸けたといえるのでしょう。
彼が目指していた、「1千万人がコーチングを体験する」という遺志を、
コーチとしての仕事する私たちは引き継いでいきたいと思っています。

コーチヴィル(日本)▼
コーチヴィル(米国)▼

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