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期待しない
コピーしました コピーに失敗しました講演で、「コーチング云々の前にまずは部下に声かけましょう」という話をよくします。
「みんな自分の存在を認めてもらいたいんだから、まず相手がそこにいることを認知してあげましょう」と。
そしたら先日、ある企業での講演の後に50歳ぐらいの管理職から質問が出ました。
「声かけるのが大事なのはわかるんだけど、声かけても返事返さないのがいてさ。微妙に頭が下に動くけどそれだけみたいな。そうすると傷ついちゃうんだよね。こっちも人間だからめげちゃうわけよ。結構多いんだよ、最近の若いのに。どうすれば傷つかずにいられるかな?」
300人近く同僚がいる中で正直に自分のことを話す彼の勇気に応えたいと思い、講演であるにも関わらず彼とやり取りを始めました。
「部下がどうしてくれるのを期待してます?」
まさか、質問し返されるとは思っていなかったのでしょう。
彼は一瞬驚いたような顔を見せましたが、すぐに我に返って質問に応えてくれました。
「そりゃにっこり笑って『おはようございます!』って言ってほしいよね」
「ですよね。そうすると期待が裏切られるたびに傷ついちゃうじゃないですか」
「そうだね」
「期待しなければ裏切られたって気持ち、あんまり起きませんよ」
彼は目を見開いて聞き返しました。
「期待しないの?」
「そう、見返りを期待しないんです。つらいから」
「できるのそんなこと?」
「こうして講演してるじゃないですか。昔、よくこの場面では笑ってほしいとか、ここで大きくうなづいてほしいとか、色々期待してたんですね。そうすると思い通りにいかなかったときに影響されるんですよ。『あっ、笑ってない、やばい』とか。『げっ、うなづいてない、どうしよう』 とか」
「そうだよね」
「でね、期待するのちょっとやめたんです。わりと簡単ですよ。講演のコツは聴衆に『媚びない、すりよらない、期待しない』これですね。勝手に思ってもらおうと。いいじゃないですか、部下がどう思っても。その方が気楽じゃありません?」
「それもそうだね」
彼の顔に少し安堵の色が浮かびました。
コーチは時に思いっきり相手に期待し、ときには全く期待をかけません。
どちらも最終的には相手をうまくいかせるために。
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