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出来事を物語の中に取り込ませる

出来事を物語の中に取り込ませる | Hello, Coaching!
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生きていてなんといってもつらいのは、起きている出来事を、自分自身の「物語」に取り込めないときです。

出来事が「物語」のパーツとしてしっかり役割を担っているのであれば、意味を持っているのであれば、その出来事にもはや思い悩むことはありません。

恋人と一緒になるという物語を描いていた人が、その恋人と別れなければならなくなる。当然別れという出来事をすぐには物語に取り込むことはできませんから、心は曇ります。

しかし、新たな人に出会い、「この人と一緒になるために、あの時の別れがあったんだ」と、別れを物語の一部にしっかりと書き記すことができるようになれば、もはや別れは心を曇らせる出来事ではありません。

同じように、「自分はこの部署でこんな仕事をして、こんなキャリアを積むんだ」という物語を持っていた人に、急に転部の辞令が下る。

転部という出来事は物語のどのページにも書かれていませんし、書き加えようにも、どのように書き加えたらよいかわかりません。頭はただ「こんなはずじゃなかった」を繰り返します。

転部という出来事が物語の一部となり、「あの異動は自分の人生の中でこんな意味を果たしたんだ」と思えるようになるまで、その出来事は胸の中のちょっとした重さとして残ります。

企業でコーチングのトレーニングをしていて、参加者に「どんなときに過去モチベーションが下がりましたか?」と聞くと、結構多いのが「異動したとき」という意見です。

もう少し詳しく聞いていくと、どうも「なぜその部署に行くのか」という説明をあまり上司から聞かされなかった、というのがモチベーションが下がった大きな原因であるようです。

しかし一方で異動の時に強くモチベーションの高まりを感じたという人もいます。

行きたい部署に転部できたケースはモチベーションが上がって当然ですが、中には、「望ましい部署ではなかったけれど、何を自分に期待してくれているのか、上司がとても丹念に伝えてくれたのでやる気が上がった」という人もいます。

「出来事を物語に取り込めないとき、部下のモチベーションはさがる」

コーチングマインド溢れるマネージャーはこのことをよく知っています。

だから、異動を初めとして、ほんのちょっとでも部下が物語に取り入れにくい出来事が起こると(高い売り上げ目標の提示、事業部方針の変更等)、部下がそれらを物語に少しでも早く取り込めるようにマネージャーはとことん話します。

星野元阪神監督も、ヤンキースのジョントーリ監督も、選手を2軍(マイナー)に落とすときには、相手が納得するまでじっくりその理由について説明するそうです。

そして、いついつ戻ってきて欲しいという期待もしっかりと伝える。選手の中では2軍落ちというつらい出来事もいち早く物語の中に取り込めるわけです。

部下の物語に注意を払ってみませんか。

何を書き入れることができていて、何を書き入れることができていないのか。

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