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斜めににらむ

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リーダーとしての自分の「外見」を意識的にコントロールし、リーダーシップを発揮するために追い風となるような周囲からの「見られ方」を獲得することを「プレゼンス・マネジメント」と言います。

フラット化する組織が増え、リーダーが一人一人のメンバーとひざを突き合わせる時間が少なくなるにつれ、リーダーのメンバーに対する「ぱっと見」の印象はその重要性を増しています。

3ヶ月前、ある大手企業の部長さんのエグゼクティブコーチングをスタートさせました。

「どのようなテーマがありますか?」
とお聞きすると、

「部下がもっと提案や意見を自由に言い合えるような部にしていきたいんですよね」
と答えられました。

その部長さんは、決して人の話を聞かないタイプではないのですが、人を見るときに下から斜め上を突き上げるように視線を送ってしまう。これは部下は話しにくいだろうと思って、その部長さんに聞いてみました。

「ご自分が人を斜めににらんでいらっしゃることに、気づいていらっしゃいますか?」

少し照れたような笑いを浮かべて部長さんは言いました。

「ええ気づいてますよ。これじゃあ部下は話しにくいですよね。でも、長年この顔でやってきましたから。わかってはいるんだけど、なかなか変えられないんですよ」

間髪入れずに部長さんに伝えました。

「変えなくていいんですよ、全然」

部長さんはきょとんとした顔になりました。

「変えなくていいんですか?」

「ええ、変えなくていいです。変えようと思うとつらいじゃないですか。部長が言うように長年そうしてきたわけだし。そう簡単には変わらないですよ。ただね、ひとつお願いがあるんです。この一週間、すごく『かっこよく』にらんでほしいんです。歌舞伎役者がきめを作るような感じで、かっこよく。ばしっと」

部長さんはなにがなんだかわからないような顔をしていましたが、とりあえず「わかりました」といってオフィスへと帰っていきました。

さてそれから3ヶ月。先だって部長の部下の方にお会いする機会がありました。

彼は喜色満面で話してくれました。

「鈴木さん、うちの部長本当に変わりましたよ。すっごく話しかけやすくなりました。コーチングの成果ですね!」

思わず心の中でガッツポーズをしてしまいました。

いつもいつもこううまくいくわけではありませんが、今回は「すごく」うまくいきました。何故か。

部長はいつも「無意識に」部下を斜めににらんでいたわけです。それを「もっとかっこよく」とリクエストすることで、「意識的に」にらみを効かせることができるようになりました。それによって、今まではコントロールのきかなかったにらみが、コントロールできるものになったわけです。

結果として、彼は人を斜めににらむことをやめるという選択肢も選ぶことができるようになりました。

「優しい表情をしてください」などと言っていたら、表情をコントロールできないという気持ちがより強くなって、表情を変えるということを諦めてしまっていたかもしれません。表情をあまり変えない人にとって表情を変えるというのはそう簡単なことではありませんから。

今行っていることを止めさせるのではなく、もっと「うまく」やってもらうことによって、クライアントがその行動を自分でコントロールすることができるようにするというのもあるわけですね。

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