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2つの育成手法

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育成手法の一つの大別の仕方は、それが「弱み克服型」であるか「強み伸長型」であるかです。

企業の管理職にコーチングの研修をしていると、受ける質問のほとんどは、「うちの部下が○○ができないんだけれどもどうしたらいいでしょうか?」という類の質問です。彼、彼女の弱みを克服させたいということですね。

「うちの部下は○○がいいところなんですが、どうやったらもっと伸ばしてあげられるでしょう?」という質問を受けることは滅多にありません。

どちらの手法が優れているということではありませんが、日本では、学校でも、職場でも、家庭でも、弱み克服型のスタンスが取られることが多いようです。

先日、私の知人と話していたときのことです。

彼の家では、アメリカ東部の中学校に息子さんを入れることにし、家族でそこに移り住むことにしました。

どんな学校なのかと聞くと、なんでも好きなこと得意なことしかやらせない学校だと言います。カリキュラムも一切なくて、子どもがやりたいと言ったことだけを支援し、教育する。やりたいことこそがその子の強みであり、それしかやらせない。それを謳う学校は多いけれど、そこはそれが徹底しているんだ、と。

彼は高揚した面持ちで続けました。

「実は先月、親の面接があってアメリカまで行ったんだけど、聞かれた質問はひとつだけなんだよ。『息子さんのことを信頼してますか?』って聞くんだ。『もちろん!』って答えたら、今度は『あなたは完全に息子さんを信頼していますか?』って聞くわけ。『完全にっていうのはどういうことだ?』って尋ねたら、こんな話をしてくれたんだ」

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あるとき、ひとりの生徒がいた。

彼は釣りが好きで、釣りばっかりやっていた。入学して1年、毎日釣りをやり続けた。それでも両親は子どもを信頼しようと、何も言わなかった。

2年目になっても、相変わらず釣りしかしない。

さすがに両親も心配になって、学校の先生に尋ねた。
「うちの子は大丈夫でしょうか?」
先生は答えた。
「完全に信頼しているって言いましたよね」

3年目。やはり来る日も来る日も釣りは続いた。両親はもう彼の教育については、半ば諦めていた。

4年目に入ったある日、その子は何の前触れもなくぱたっと釣りをやめた。そして写真に興味を持ち始めた。

学校は彼のために予算を取って、立派な暗室を校内につくった。さらに、写真を本当に極めるには数学の知識が必要になるため、学校は彼に数学の個人チューターをつけた。

数年後、彼は大変著名な写真家として、世界を股に駆けて活動するようになった。

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この学校は、スポーツ、芸術、ビジネス、医療、各界に著名人を輩出しているとのことです。

一概に全ての場合に、こうした手法がいいと言えるわけではないと思いますが、弱み克服型の育成スタンスに慣れた日本人にはなかなか刺激的な話でした。

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