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敗戦の将
コピーしました コピーに失敗しました企業の営業会議のオブザーブをさせていただくことがあります。肯定的な雰囲気、活発な議論、迅速な決定、より生産的な会議にするために、どんな点が改善できるのかを知るためです。
オブザーブをしていて気がつくのは、明らかに2つのタイプの営業会議があるということです。
ひとつはそこに参加しているメンバーが萎縮し、発言を控え、互いにあまり関心を示さない会議。もうひとつは、メンバーがリラックスしていて、果敢に意見を言い、お互いをサポートしあっている会議。営業会議に関していうと、中間というのをあまり見たことがありません。どちらかです。
何がこの違いを生み出しているのか。幾つか要因はありますが、最近ある企業の会議を見ていて、「ああこういうことか」と思ったことがあります。
要するに「盛り上がらない営業会議」というのは「敗戦の将」を責めているわけです。
「大阪は今月なんでこんな数字だったんだ!」
「なんで言われた通りにキャンペーンを実施できなかったんだ!」
参加者の目線は下へ下へと落ちていく。
それに対して「盛り上がる営業会議」では、「敗戦の将」を決して責めずに、新たな目標設定を、その場で促している。
「3月のキャンペーン、どんな風に成功させようと思っている?」
「いつまでに、どれくらい新人のスキルを伸ばそうと考えている?」
これはこれで厳しいアプローチだと思いますが、参加者は決して下を向きません。
「盛り上がる営業会議」をリードしていたある複写機メーカーの支社長に、いつもこんな風に会議を運営しているのかと聞きました。
支社長曰く、
「過去は変えられませんけど、未来は変えられますから。だから部下に聞くのは徹底して、これからどうするのかということだけです。過去は数字を見ればわかるわけですし」
「仮に誰かをつるしあげたとしますよね。その人間は必ず営業所に帰って自分の部下をつるし上げます。つるし上げの連鎖が起こるわけです。そうすればあっという間に支社の雰囲気は悪くなります」
この支社は現在全国9支社の中で、断トツでトップの成績を上げています。
塩野七生さんの「ローマ人の物語」(新潮文庫)によると、ローマ帝国が比類なき大帝国を築き上げられたひとつの理由は、戦いに敗れた指揮官を決して責めなかったことにあるようです。責めれば軍が萎縮する。萎縮は自由な発想と勇気を戦士たちから奪う。
あなたの会社では「敗戦の将」をどのように扱っているでしょうか?
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