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レッテルをはがす
2005年03月30日
「あなたってどんな人?」
以前、ここで、ハーレン・アンダーソン(ナラティブセラピーの第一人者)について紹介したことがあります。 彼女の口癖は「あなたってどんな人?」 誰にでもこれを聞きます。また、同じ人に何度でも聞きます。
「あなたってどんな人?」そう聞かれると、とりあえず通り一遍の答えをします。しかし、また聞かれると用意がないのでちょっと苦しい感じがあります。
それでも、また次の日に「あなたってどんな人?」そう聞かれると、自分がどんな人間なのか、思いをめぐらせてみたい気持ちになります。また、「あなたってどんな人?」そう聞かれるたびに、自分に対する興味を向けられている、関心をもってもらっていることが、嬉しく思えるようになります。
もうすぐ4月。新学期が始まります。新入生、そして、クラス替え。クラス替えがあると、クラスの新しい仲間はどんな人たちなのか、最初はみんな、様子見をします。やがて、すこしずつ言葉を交わすようになり、やがてお互いがどんなタイプの人間なのかを学習します。
レッテルを貼るということ
この友だちは「こういう人」
あの友だちは「こういう人」
いくつかのレッテルを貼って、次からはそれを基に対応するようになります。そして、そのレッテルを基に、お互いの距離を測るようになります。
会社においても同じです。仕事ができる、できない。気が利く、利かない。お互いに、さまざまなレッテルを貼ります。上司も部下に、部下も上司にレッテルを貼ります。不思議な話ですが、一度レッテルを貼ってしまうと、事実よりもレッテルの方が、価値ある情報になってしまいます。
また、私たちは時間が経っても、同じレッテルを貼り続けるものです。レッテルを貼るということは、その人について「わかっている」ことを意味します。つまり、一度レッテルを貼ってしまえば、それ以上知る理由がないのです。
ですから、すでに知っている範囲で対応するでしょうし、すでに「わかっている」のですから、改めてコミュニケーションを交わし、自分の部下がどんな人なのかを知る必要がありません。それは、人に対する興味を失わせ、相手を知るための努力やコミュニケーションを低下させることになります。確かに頭では、部下についてすべて知っているわけではないと理解しながらも、人に対する興味は失せていくのです。
あなたは部下について何を知っているか
エグゼクティブやマネージャーとのコーチングセッションで、部下について何を知っているか質問をすることがよくあります。また、次のような宿題を出すこともあります。
部下の、
- 強みはなんですか
- どんな価値観を持っていますか
- コミュニケーション能力はどうですか
- 健康状態はどうですか
- 睡眠は足りていますか
- 今どんな気がかりをもっていますか
- どんなビジョンをもっていますか
- 会社では発揮する機会はないが、他で発揮している能力はありませんか
- どんなときに嬉しいと感じるのでしょうか
これらの質問に答えていく過程で、彼らは部下とコミュニケーションを交わし、部下について具体的に知る機会を得ます。レッテルではなく、生身の部下は、どのようなことを考え、感じ、行動しているのかを知り、人に対する興味を喚起するのです。
コミュニケーションとは、その場、その場で創り上げるものですが、同時に、コミュニケーションは、それを交わす以前に、どのような質問を自分の内側に持つかによって決定されるものでもあります。
頭の中にデータベースをもち、そこに部下の新鮮なデータを入れる。そして、入れ替える。この作業が、人に対する興味、そして、コミュニケーションの原動力となります。
最初は、何を知っていて、何を知らないのかも知らないわけです。職場だけではなく、家族や友人関係でも同じです。ぜひあなたも、まわりの人について上に書いた質問に答えることから始めてみてください。
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