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約束するということ

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私は、28歳のときに中学校の教員を辞め、コミュニケーションに関する研修を行う会社に転職しました。

入社して初めて、大きな研修をひとりで担当することになったときのことです。その研修の初日には、「約束」と「目標」が大きなテーマとして扱われることになっていました。

「約束とは何か?」
「目標とは何か?」

約束しても破られることがある。目標を決めても達成しないことがある。

レクチャーの原稿を書こうとして机に向かったものの、それまでわかったつもりでいたのに、いざ書こうとしてもまったく筆が進みません。考えれば考えるほど混乱していきます。

私は、考えあぐねた末に、私のファシリテーションの先生でもあった上司に相談しました。

「約束するとはどういうことなんでしょう。目標とはどのように違うのですか?」
「単に頭でわかりたいの? それともその違いを体験的に知りたいの?」
「もちろん、体験的に知りたいです」

すると、上司は言いました。
「だったら、今、この場で僕と約束しよう」

今日から1週間以内に3件の研修の契約を取るという約束をする。約束が守られなければ、今回の研修講師は降りる。

「そんな約束はできません。1週間以内に3件の契約をとるなんて、できるかどうか、わかりません」

「ほら、目標と約束はぜんぜん違うものだろう。理解した?」
「なるほど......。そうですね。よくわかりました。ありがとうございました」

私は、少しほっとしてその場を立ち去ろうとしました。

「ところで桜井くん、約束を体験したいんだろう? 今の約束、僕としようよ」
「え? そんな約束は無理です」
「約束には2種類あるんだ。自分との約束と人との約束。自分との約束を守れるようになると人生で多くのことが実現する。でも、自分との約束を守るのはなかなか難しいから、最初は人との約束から始めるんだよ。僕と約束しよう」
「約束して、できなかったらどうするんですか?」
「それは最初から約束じゃなかったっていうことだね。約束は果たすものだよ」
「簡単にハイとはいえません。少し考えさせてください」

そして1時間後、私は決断し、上司と約束をしました。そして1週間後、私は約束を果たしました。

その1週間は、とても気分がよかったことを、今でも鮮明に覚えています。もちろん、ときどき不安がよぎるのですが、その度ごとに、もう一度自分の中で約束をしなおすのです。

そのときに感じるのは、プレッシャーではなく、約束を果たしたときの気持ちのよさや晴れやかさ。それは約束をしたその瞬間に、自分の内側に起こるものだということを知りました。

その1週間は、私の「約束」に対する捉え方を変えました。

約束は、それがどんなに小さな約束であったとしても、人生を豊かにするのだと思います。

今日、誰かに約束をしてみませんか?

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