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若手にビジョンを語らせる

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今朝(7月20日付け)の日経新聞読まれましたか?

1面に『会社とは何か』という特集記事があります。その中に、大卒者の3割が入社3年で離職するという数値が記載されています。多大なコストをかけ採用した新人を、いかに会社に定着させるかは、今、多くの企業にとって緊急に解決すべき課題となっています。

そんな企業のニーズを反映してでしょうか。昨今弊社には、3〜5年目の社員に対して、改めて自分のキャリアを見定めるような研修を実施してほしい、という依頼が多く来るようになりました。

先週も、ある企業で、3年目の若手を対象に、「未来のビジョンを構築する」というワークショップを行いました。

受講者と話しているとわかるのは、要するに、彼らは「漠然とした」不安を抱えているということです。すごく会社が嫌なわけでもないけれど、この会社にずっといることが正しい選択であると自信を持っていえるわけでもない。なんとなく晴れやかでないというような状態が続いているわけです。

このワークショップのひとつの「売り」は、2人でペアになり、片方の人がもう一方の人に対して、30分間、自分のビジョンについて話し続けるというエクササイズ(実習)です。30分経ったら役割を交代します。そして、今度はさっき聞き手にまわっていた人が、自分のビジョンを30分話し続けます。

たいてい、30分ビジョンを話し続けてくださいというと、「え〜!」というどよめきが漏れます。先週もそうでした。「30分も話すことないですよ」

これに対してモチベーションをかけるのが私たちの仕事です。先週はこんな風に言いました。

「話したいことがあるから話すのではなくて、話しているうちに話したいことが湧き出てくる。そんなスタンスで話してみてください」
「大事なのは止めないことです。たとえ『ああ、もう出ないな』と思っても、決して雑談を始めるようなことはしないでください」
「同じことを繰り返し話しても構いません。話しているうちに芋づる式に内側に眠る言葉が引き出されていきますから」

実際、本田宗一郎さんも、アインシュタインも、およそクリエイティブといわれる人は、誰かに自分の考えていることをしゃべりながら未来を描いていったという人が多いようです。

マン島のレースで優勝したバイクも、相対性理論も、孤独な思索の果てに生まれたものではなく、周囲に想いを話す過程でだんだんと形になっていったらしいのです。つまり、人は思っていることを話す以上に、話しているうちに思っていることに気が付く。そんな側面が多分にあるわけです。

ワークショップの受講者に、30分のビジョントーキングの後、感想を聞きました。

多くの参加者が上気した顔で、次のように語ってくれました。

「もう一度真剣に仕事と向き合ってみようと思いました」
「この会社の中ではもうやりたいことなんかないと思っていたのだけれど、それがあることに気が付きました」
「そもそもなんでこの会社を選んだのか久しぶりに思い出しました」

企業の若手に、上司に対する不満は何かというリサーチを行うと、一番はたいてい「自分の将来に対する想いを上司は聞いてくれない」というものです。だから彼らの内側のもやもやはそこに停滞したままとなる。一方、若手の離職率が高くなればなるほど、上司は彼らの将来に耳を傾けるのは「パンドラの箱」を開けるようなものだと思ってしまいますから、余計に彼らの将来に向き合うことを避けてしまう。悪循環ですね。

しかし、実際には、このワークショップでやっているように、思い切って彼らに話す機会を与えてしまえば、彼らは自分自身でその会社の選択理由を見出す可能性が高いようです。もちろん、話す中で、他社を選んでしまうかもしれません。ですが、それでも、平均離職率は30%より下がると思うのですが。

思い切って若手の話を聞いてみませんか。手遅れになる前に。

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