Coach's VIEW

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部下の独立

クライアントは35歳男性、貿易会社の経営者。スタッフは50名。
3年後に300人の会社にするというゴールで、コーチングを開始しました。
会社の急成長にともない、社員数が急増していました。

コーチングを開始して2ヶ月後、一人の部下に焦点が当たりました。

創業時のメンバーの一人。
営業職でスペシャリティーを持っています。
ところが頻繁に取引先に対して特例を与えて契約してしまう。

いままでは一人でやっていたセクションだったので
問題にはなりませんでしたが、
チームで行うようになって、彼のスタンドプレーが
社内でのトラブルに発展するようになってしまったのです。

「桜井さん、例の彼、またトラブルを起こしたんだよ。
今回は今までになく厳しく叱ったので、
彼も落ち込んでいるけど、また繰り返すと思う。
彼独特の営業スタイルなんだよ。
彼のことを考えると胃が痛くて眠れないよ。」

「社長としてはこの先どうしたら良いと思っているんですか?」

「彼は影響力があるんですよ。
本当は頑張って会社を引っ張っていって欲しい。
少なくとも会社全体を考えて行動して欲しいと思ってるんですよ。」

「でも、何度言ってもだめなんですよね?
この先、スタンドプレーをやめて、
社長の思うようなリーダーになる可能性はあるんですか?」

「今まで、その可能性にかけて、長い目で見てきたつもりだけど。
だめなのかも知れないな」

「だとしたら、この先にはどういう選択肢があるんですか?」

しばらく沈黙が続きました。

「この会社で一緒にやっていくのは無理なのかも知れないな。
能力はあるんだから、独立してもやっていけるだろうし...」

「彼はどう思っているんでしょう?」

「それは聞いたことがないな。
彼が独立するなんていうのは今まで僕の選択肢になかったからね。
考えてみれば、彼も苦しいのかもしれないね。
立場上、会社を辞めたいとは言い出しにくいだろうし。
腹を割って話してみるか。
でも、残る社員に悪い影響がないように、
彼自身も前向きに、そういうレールを敷くのは大変なことだな。」

もちろん、自分が採用して育てた部下ですから
社長にとっては愛情があるわけです。
会社を辞めてもらうなんていうことは考えもしなかった。

かといって、このままでは会社にとって問題がある。
周囲の部下にも示しがつかない。

もちろん無理やり辞めさせる訳にはいかないし、
少しでもそのようなニュアンスが伝わってしまえば、
社内は険悪なムードになる。

それは会社にとっては一番困るわけです。
この時点で、部下の育成をテーマにスタートしたコーチングが、
部下の独立のためのコーチングに発展していきました。

そして3ヵ月後、この部下は円満退職、独立を果たしました。

彼はとても前向きに独立していきました。本当によかった。
コーチングがなかったら、今でも彼はこの会社の中で、
悶々と苦しんでいたかもしれない。
しかも、残った社員は、今まで以上にのびのび働くことができている。
もし、自分一人だけで考えていたら、こういうビジョンは持てなかったし、
こんなに早いスピードで達成することはできなかったと思います。」

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