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今年も、日本コーチ協会主催のコーチング大会が11月5日と迫ってきました。

この時期には、毎年デービッド・ゴールドスミス氏がやってきます。デービッドは、コーチ・トゥエンティワンが、1997年に最初にコーチングのセミナーを行ったときのコーチであり、ファシリテーターです。

コーチングという言葉すら聞いたことのない100人の日本人たちを前に、最初のセミナーを行うことが未知のことで、よほど怖かったらしく、奥さんを同伴して(彼女はコーチではないのですが)来日。セミナー中、彼女はずっと部屋の後ろでにこやかに笑みを送っていました。そのおかげで、セミナーはうまくいったと後でのろけて教えてくれました。

そのセミナーの時のことですが、テキストとして、当時提携先のコーチユニバーシティの「コーチングスキルブック」を急遽翻訳して使いました。

「コーチングスキルブック」は、約100ものコーチングスキルを図解し、定義、使い方の事例、失敗例などを紹介したものなのですが、その中に「MSU」という実に奇妙なスキルが紹介されていました。「MSU」とは「Make Stuff Up」の略。つまり「でっちあげ」という意味だったのです。これは、テキストを作ったトマス・レナード氏(コーチユニバーシティの創設者)独特のユーモアのセンスによるもので、「コーチは時には口からでまかせで言うことも機能する」というものでした。

しかし、よりによって、セミナー中に「何か質問がありますか?」とデービッドが聞いた時、すっと手が挙がり、「このMSUって何ですか?」と、大真面目に質問した人がいました。

そのときのデービッドの顔が忘れられません。まるで何事もなかったようなポーカーフェースで、「ふーむ。これはなんでしょう? たいしたことではないから、忘れてください」としれっと言ったのです。後で私も聞いたら「本当に遊びの言葉なので、深入りしても意味がないから先に進めた」と言いました。無駄なことはしないのだということが伝わってきました。

デービッドが、プログラムを提供するときのスタンスはいつも決まっています。それは必ず、「状況をエヴァリュエーションする」ということです。
 
休憩時間になると必ず、
「今のはどうだったか」
「分かりやすいか」
「来ている人が欲しいものを提供できているか」
「何か他に提供したほうがいいものはあるか」
と実にニュートラルに聞いてきます。

ですから、こちらも「いいえ、よかったですよ」などのおためごかしを言う必要がなく、「ここが分かりにくかったから、次はこれを伝えてほしい」とか、リクエストがしやすいのです。
 
彼はこちらが伝えることを受け入れ、随時軌道修正していきます。そこには、「私のやり方はこれだ」というようなエゴも頑なさもなく、最高のものを提供するために、また相手が成果を手にいれるために、今自分に何ができるか、というところに常にアクセスしているように感じられます。このニュートラルさが、コーチとして、そして、仕事をする上においても、実に重要なファクターであることを最近実感しています。そんなときには、例のポーカーフェースを思い出し、私も周りの人からエヴァリュエーションを聞くようにしています。

今回の来日にあわせて、デービッドが「日本のコーチに僕ができることはないか?」と聞いてきました。そこで、11月3日に合わせ、1日の集中トレーニングを開催することになりました。コーチとして勉強している人も、コーチングをこれから学びたい人も一緒に参加できる1日となります。

「今日はいつになく非常にクリエイティブ。このプログラム構成どう?」と、ニュートラルな彼には珍しく、エキサイトしたメールが先日来ました。また、彼から新たなものを学ぶ予感がしています。

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