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期待と現実

上司に対して部下はどう思っているのか。
どんなリクエストがあるのか。
コーチング研修で事前にアンケートをとってもらうことがあります。
そのアンケートを受け取った瞬間の上司のみなさんの表情は、なんとも様々です。
「おお、結構いいじゃん!」満面の笑みを浮かべて喜ぶ方。
「誰だよこれ書いたの!」いきなり犯人探しをされる方。
「。。。」暗くうつむいてしまう方。
どちらかといえば、あまりハッピーではない方が多いでしょうか。
いずれにしても、上司はその瞬間知るわけです。
部下が自分に対してどんな「期待」を抱いているのかを。
ご存知のように、人に対する信頼は、その人に向けた「期待」と、
実際にその人が起こす「現実」とのバランスによって上がり下がりします。
「期待」=「現実」であれば、信頼は醸成され、
「期待」>「現実」であれば、信頼は下がり、
「期待」<「現実」となれば、信頼はぐっと高まります。
一ついえるのは、
「うまくいっている上司」は、「部下の自分に対する期待」が
「自分が部下に見せている現実」と沿っているかどうかを
強く意識しているということです。
「部下は何を期待しているんだろう?」「どんな言葉をかけてほしいんだろう?」と。
一方、「うまくいっていない上司」は、
「自分が部下に対してもっている期待」が「部下が自分に見せている現実」と
イコールになるかどうかばかりに気を取られています。
「部下は思った通りに動いているのか?」「なんで動かないんだ?」
だからアンケートを見て愕然とするわけです。
「そんな風に思っていたのか。。」
コーチングをさせていただいている、あるメーカーの執行役員の方が言いました。
史上最年少で執行役員になった方で、部下の「期待」を察することに
とても優れています。
「僕は部長達に口を酸っぱくして言ってるんですよ。
『君達は営業が優秀だから部長になった。営業と部下の育成は全く同じだ。
優秀な営業マンは、お客様のニーズを見つけるのがうまい。
そして、そのニーズに合った提案ができる。
同じように、優秀な上司は部下一人ひとりのニーズをまず見つけ出す。
部下がどうして欲しいのかということをまず知ろうとする。
指示をするのはそれからだ。』
ってね。」
「でも、鈴木さん、本当に優秀な上司はニーズに答えるだけじゃないんだよ。
何をするか知ってる?」
突然の質問に、
「ん~、何でしょう??」。答えが浮かびませんでした。
「ダメだよ、コーチングの先生なんだから、答えられなきゃ(笑)。
本当に優秀な上司はさ、小さなサプライズを部下に起こすんだな。」
「小さなサプライズ?」
「そう、部下の予測よりもちょっと上回ることをしてあげる。
日報にちょっと多目にコメントを書いて返すとか。
ちょっと高い寿司屋に連れて行って自腹でおごってやるとか。
こっちが正直に謝るとか。
サプライズは部下の中に残るからね。お説教はあんまり残らないけど(笑)。」
人の「期待」を掴み、それを上回る「現実」を提示して小さなサプライズを起こす。
人心掌握の基本なのかもしれません。
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