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見えている会話、見えない会話
2006年02月08日
以前、心臓内科の先生と一緒にリサーチをしたことがあります。心臓発作を起こしながらも一命を取りとめた人たち5名に、どういう理由で九死に一生を得たのか、彼らの考え方や行動様式に関するインタビューを行いました。
こちらが期待するような共通した答えは特になくて、彼らはそれぞれに違った考え方と行動様式をもっていました。その中の、ひとりの会社の経営者が話してくれたことは、とても強く私の印象に残りました。
「集中治療室から一般の病棟に移された日にね、まだ目を開けることもできなくて、眠っているような起きているような状態のときなんだけど、ベッドの周りで話し声がするんだよ。それは家内や子どもたちで、内容は覚えていないんだけど、 たわいもないことをずっと話しているんだよね」
「それはどんな感じだったんですか?」
「声を聞いていると、だんだん目の前が明るくなってくるような、気分がとてもよくなってね」
「そうですか」
「その声を聞いていたら、自分は生きているんだなーって思って......。それから、生きていてよかったなって思った。そして、これからも生きていたいって思ったんだ」
「そうなんですか」
「うん、今だってあのときの声が聞こえるような気がする」
アメリカで、交通事故で救急治療室に運ばれた子どもの生存率に関する調査があり、アングロサクソン系とラテン系では、ラテン系の子どもが生き残る確率が高いそうです。
どうも、ラテン系は大家族で病院におしかけて、子どもの周りであれこれ話したり、聖書を読んだり、子どもに触ったりするらしい。アングロサクソン系はその反対で、小家族ですから、ラテン系のようなわけにはいかない。
声を聞いたり、見たり、触ったりすると、なにか安心します。おとなも子どもも安心していたいわけです。
コーチングのスキルが知りたいという声をよく耳にします。もちろん、それは効果的です。しかし、それ以前に人と話していて、自分が安心できること、相手を安心させること。コーチングのスキルは、その上に初めてのるものだと思います。そこにどのような関わりを作り出しているかによって、コーチングの効果の現れ方は違ってきます。
表面的な会話がどれだけスマートであっても、見えない会話、そこに築かれている信頼や信用がなければ、少なくとも行動に変化は現れないものです。
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