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ほめるとねぎらう

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先日講演に行った帰り道、同行したアシスタントから突然切り出されました。

「鈴木さんは、まったく私のことをほめてくれない」

軽い晴天の霹靂でした。正直、何を言われているのかわかりませんでした。

「ほめてない? うそ? ほめてるでしょ?」
「いいえ、全然ほめてません。」
「だって、メールは最優先で返信してるし、しょっちゅう『ありがとう』ってねぎらいの言葉もかけてるでしょ」
「確かに『ありがとう』とは言ってくれますけど、ほめてはくれません。ほめられないから、何が良くて何が悪いのかちっともわからない。『ほめる技術』の著者とは思えませんね」

あまりにもストレートなフィードバックに、後頭部を殴られたような想いでした。

そう言われてみると、確かに「ねぎらい」はいっぱいしていますが、「ほめる」ことはあまりしていません。彼女からすると、すべての自分の行為に同じ「ねぎらい」がくるので、どの行為が良くて、どの行為が改善すべきかの区別がつかないというわけです。それでは、自分が成長している実感が持てないではないか、と。

彼女はさらに続けました。

「鈴木さんはきっと基準が高いんですね。基準に満たないものはほめない。でも、承認は必要だと思っているから、基準以下のものにはすべて『ありがとう』を伝える。それだと基準に到達しない限り、どこを認められていて、どこを認められていないのかわかりませんよね」
「なるほど......」

頭の半分は相変わらずショックで、ぼ~っとしているのですが、残りの半分は冷静に彼女の話を追っていて、思わず納得してしまいました。

研修では日々伝えているわけです。「ほめるというのは、前進への促しです」と。ほめるという行為を通して、相手に今現在の立ち位置を確認させることができる。今動いている方向にそのまま進めばいいのか、それとも軌道修正すべきなのか。つまり、ほめるというのは、育成される側の人の行動に「GO」か「CHANGE」かのマークをつける営みでもあると。そして、それは自分では当然できていることだと思っていたのですが、どうも自分の基準に到達しない行動は、「粗く」見ていたようです。

おそらく、彼女にこのことを言われていなければ、その自分のパターンにはなかなか気づけなかったでしょう。上司である自分にストレートにものを言うのは、きっとリスクがあったと思います。それを押して伝えてくれた彼女には、とても感謝しています。

余談ですが、彼女と別れひとり電車に乗ったとき、昔大学の友人から聞いた話が、なぜか、ふと頭をよぎりました。

友人曰く、「この前さ、彼女に振られたんだよ。で、そんときにさ、彼女が『あなたはいつもニコニコしていてわからない』って。一体なんなんだよな!」

どうも、今も昔もメリハリのきかない男はだめなようです。

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