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質問のもつ力
2006年03月08日
コーチは効果的な質問を創り出す。クライアントはその質問に答える。その過程で、世界の見え方が変わる。そこにコーチングの価値があります。
数学は、問題を解くよりも問題をつくる方が難しい、という話を聞いたことがあります。素数、完全数、虚数、友愛数。こういうものを見つけ出した人は、数式や数字について、長いあいだ問われてきたこと、また、自分で疑問に思っていたこと、その答えを探している過程で発見したり、思いついたりしたのかもしれません。この瞬間も、答えを探している人たちがいるんでしょうね。
何も数学に限ったことではなく、日々の仕事、コミュニケーションの取り方、自分自身について、すでにあたりまえのように思っている事柄も、もし視点を変え、世界を違ったところから見ることができれば、そこに変化や改善の可能性が広がります。
たとえばコミュニケーションですが、私たちは、コミュニケーションが交わされているという前提でコミュニケーションを問題にする傾向があります。しかし、本当にコミュニケーションは交わされているのでしょうか?
実はコミュニケーションと言いながら、家庭でも会社でも、力のある人が一方的に指示命令をしているだけで、そこには双方向性がない場合もあるわけです。
当然の前提に対しても、質問されることで初めてそこに目が向き、そこから、解決の糸口が見つかることはよくあります。
おそらく問題が問題なのは、「何が問題なのか、それに気がついていないこと」にあります。「知らないことを知らない」のですから、知りようがありません。 質問されて初めて、それを知らないと自覚でき、自覚して初めて、行動の変化を試みるようになります。自覚がなければ、行動は変わらない。得てして、自分の態度や行動、コミュニケーションが周囲にどのような影響を与えているか、あまり自覚がないものなのです。
人が自分のもてる能力に気づき、それを発揮できるようになるのは、ひとつの問題を、いろいろな角度から観察することができるようになるときです。すでにわかっているつもりになっているようなことであっても、新たな視点から見ることができるようになると、そこには、新たな発見があるものです。
しかし、自分の意志だけで、自由に視点を動かすことができるのかというと、それはなかなか難しい。それができる人もいるのかもしれませんが、そこにコーチの視点をもち込むことによって、少なくとも複数の視点で、ひとつの問題を観察できるようになります。問題を解決するのではありません。そこに質問をもち込み、それに答えようとするときに、初めてこれまでと違うものの見方を経験するのです。違った視点をもつことは、行動を起こし、行動を変える起因となります。
地面ばかりを見ていては、星を見ることはできない。たとえ、空に星があっても、そこに目を向けなければ、星はないに等しい。金貨が落ちていても、そこに目を向けなければ、それを拾えない。
「一番最後に星を見たのはいつですか?」
「あなたの隣の席の人は、昨日どんな服装でしたか?」
「今、何が見えていますか?」
私がコーチングをしていてする質問は、いまこの瞬間に見えているもの、聞こえていること、考えていること、思っていること。今、何が起こっているかに焦点を当てた質問をします。そうすることで、ものごとを具体的にとらえられるようになります。
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