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コーチングのセオリーは?
コピーしました コピーに失敗しました今年のはじめ、アメリカでコーチングのカンファレンスに参加してきました。
これまで、国際コーチング連盟(International Coach Federation)のカンファレンスに5年続けて参加しましたが、今回は、今まで会ったことのないタイプのコーチたちに多く出会いました。
今回出会った人たちは、ほとんどが「コーポレートコーチ(企業を対象としたコーチ)」または、企業でコーチングの導入に積極的に関わっている人材育成、人事担当者でした。
そこで、ひとりのコーチと出会いました。彼はデービッド・マシュー・プライヤー氏。
彼の経歴は非常にユニーク。チェースマンハッタン銀行でオフィサーとして勤務後、演劇学校に入学・卒業。その後、8年間もニューヨークでプロの俳優に対して即興演劇を教え、その後コーチとして勉強をし、現在、東海岸を中心に精力的にコーチとして活動をしています。その傍ら、2つの大学のビジネススクールでコーチングについて教鞭をとっています。語学にも堪能な彼は、スペインのコーチングスクールでもスペイン語で教えているとのこと。現在、国際コーチング連盟の副委員長も務めています。
アメリカに到着した次の日、プライヤー氏と、彼のビジネスパートナーと一緒にランチをしました。そのときに最初に聞かれた質問が、非常に印象に残りました。
「で、あなたたちがやっているコーチングはどのセオリーに基づいているの?」
「コーチングとは何ですか?」という質問に慣れている私にとって、「何のセオリーに基づいているか?」という質問を受けるのは初めての体験でした。
「それはですね、まず目標設定し、コーチとクライアントとの関係において、質問を相手に投げかけることで気づきを促し、目標を達成するように行動を促進させることなんです」
初めて受ける質問に多少面食らいながら、「これはコーチングは何かを説明しているのであって、何のセオリーに基づいているのかを話しているわけではないな......」と心の中で思っていました。
私の説明を静かに聴いていたデービッドは、私が話し終わった後に一言、「つまり、ビヘイビア・モディフィケーション(行動変容)のセオリーに基づいているんだね」と言いました。
その会話以来、周りのコーチたちと話をすると、セオリーに基づく発言が多いことに気づきました。ある人は、NLP(神経言語学)的なアプローチをベースにしていたり、ある人は、「脳」の機能に基づいてコーチングの影響を実証する人もいます。つまりCoaching Works(コーチングは機能する)という前提で、「コーチングを行うとなぜ行動が変わるのか」を理論的に説明することが求められているのだということを実感しました。特に、コーポレートコーチたちには、コーチングに対するROIが要求されているため、企業を説得させるために、理論的な説明が不可欠なのだといえるでしょう。
実際のところ、そこで出会った人たちのほとんどはMBAの保持者であり、なかには心理学、医学、行動科学などの専門家もいました。彼らとの会話は知的で、アカデミックで、とても興奮するものでした。コーチとして仕事をしている私は、関連領域について勉強し続ける必要がある、ということを実感しました。
いずれにせよ、「コーチングは機能する」という前提があるのは、とても励まされる体験でした。
コーチ・トゥエンティワンは今年で設立9年目になりますが「コーチングとは?」から「コーチングがなぜ機能するのか?」を、理論的に解明するフェーズに突入したのだと感じています。
ちなみに、デービッドは今年2月、「聴くだけでわかるコーチングセミナー」で日本にいるコーチのために、電話会議による講師を務め、非常に内容の濃い2時間を提供してくれました。今年後半にも「質問学」というタイトルで、再び登場してくれます。組織内における行動科学的な見地から質問の機能を探る、というものです。これもアカデミックなアプローチであり、今から楽しみにしています。
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