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跳び箱のコーチ

 小学校三年生の次女は、先月から体育の個人コーチについています。
 体育の個人コーチ。
 跳び箱や逆上がり、二重跳び、かけっこなど、
 体育の中でも特に苦手になりやすい種目について、
 一対一でコーチをするのです。

 次女は、少し体育が苦手。
 半年ほど前から授業で跳び箱がはじまり、
 跳べずに悔しい思いをしていました。
 そんなときに、体育の個人コーチというものがあることを知り、
 ものは試し、という軽い気持ちではじめたのです。

 1回目のコーチング。
 娘はいつものやり方でチャレンジしますが、
 案の定、うまく跳べずに跳び箱の上に尻餅をついてしまいました。

 コーチは、もう少し早く走る、手を遠くにつく、
 ついた手をぐっと押すなど、ちょっとしたコツを教えてくれるのです。
 娘はまったく跳べなかった跳び箱を、
 一週間後の2回目のコーチングで、跳んでしまいました。

 先日、若手のコーチが、
 小学生の男の子に逆上がりの指導をしていました。

 ところが、男の子のやる気がどんどん失せていくのが、
 はた目にも明らかにわかります。
 もっと強く蹴って、もっと右足を高くあげて、もっと勢いをつけて。

 コツを教えるという点では同じです。
 私から見てもコーチの言っていることはもっともです。
 ところが、男の子のやる気はどんどん無くなっていくわけです。

 見るにみかねたのでしょうか、ベテランのコーチが指導を変わりました。
 すると5分もしないうちに、
 男の子のやる気は見違えるように回復したのです。

 何が違うのか。

 こうするとうまくいくというコツを教える。
 それは共通点。

 決定的に違うのは、承認です。

 うまいコーチは、承認する。
 しかも子供をよく観察して、事実を承認する。

 「つま先がここまであがったよ」
 「さっきより踏み込みが強くなってるよ」

 それは、おだてるような言い方ではありません。
 本人が気づいていないような微細な進歩を
 承認という形でフィードバックしているのです。

 自分自身で自覚できるような明らかな成長や進歩があれば、
 それは何よりも強いモチベーションの向上につながるでしょう。
 そうなればもうしめたものです。
 何も言わなくても本人が努力をはじめます。

 ところが、そこにいくまでの過程で
 自分自身の進歩を感じることができなければ、
 やっても無駄だとあきらめの気持ちが強くなってしまう。
 それは挫折につながることもあるかもしれません。
 その微細な成長は、なかなか自分自身では気づけないのです。

 それがコーチをつけるひとつの意味だと思います。
 いいコーチは、
 本人には自覚できないような微細な成長や進歩を観察し、伝える。

 その意味でコーチの存在は、逆上がりのできない小学生にとっても、
 世界一を目指すタイガーウッズにとっても同じなのかも知れません。

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