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学習者主体の成人学習とは?
コピーしました コピーに失敗しましたコーチ・トゥエンティワンの、コーチを育成する「コーチ・トレーニング・プログラム(以下CTP、現在のコーチ・エィ アカデミア)」は、すべて「ブリッジ」という電話会議システムを使って行われます。
このモデルとなったのは、アメリカのコーチ育成機関であるCoach U(コーチユニバーシティ)。1997年当時、何度説明を受けても、なかなか電話会議で学習することのイメージがつかめませんでした。
ブリッジを使ったプログラム運営は、「成人学習」に適しているとして、アメリカでは人気があります。
CTPのクラスでは参加者が20人。クラスを運営するのは「クラスコーチ」と呼ばれる人です。現在146人のクラスコーチがいますが、20人の参加者を対象に55分間電話会議でのクラスで学びを促すには、高度なスキルを要します。
参加者は子供ではなく、仕事についている大人です。彼らは「いずれ役に立つかもしれない知識」より、「今すぐ使える知識」を求めています。しかも、実は、参加者自身の生の体験や知恵にこそ「学びや答え」があることが多く、クラスコーチはいかにそれらを引き出し、他の参加者へと還元するかが勝負となります。ですから、CTPのクラスというのは、「教えること」を主体とした学校教育とは一味違い「お互いから学習すること」を主体とした新しい学習体験なのです。
私も、クラスコーチとしてCTPのクラスを毎週行っています。クラスの中で質問をしても、誰も答えずに「シーン」とすると冷や汗が吹き出し、逆に、参加者の方から思いがけないノウハウや知恵を引き出すことができたときは、興奮で鳥肌が立つことがあります。
先日、「目的を持って聞く」というクラスを行いました。これは、コーチは相手の言葉を文字通り聞くのではなく、話していることからその人の「価値観」「強み」「調子」などを聞き分けることの重要性を学ぶクラスです。そのクラスで、ある歯科医の方が、ご自分の体験を話してくださいました。
「私たちは患者さんのもっている価値観に耳を傾けることを大切にしています。同じ『痛い』という言葉でも、時間がないので早く治療を終わらせたい人の『痛い』と、そうでない人の『痛い』は、意味が違う。その人が何を重視しているのかを聞く必要があります」
このような発言は、テキストに書いてある説明より数倍も説得力をもちます。
電話会議のエキスパートである、バイロン・アースデール氏はかつて、クラス運営で大事なポイントについて次のように語りました。
「人は自分が創り上げたことのみを受け入れます。クラスコーチは質問をすることによって、参加者の知恵、知識、経験を引き出し、参加者全員で分かち合う。このプロセスに参加することでのみ、人はそれを受け入れるのです。逆に、一方的に教えられたものは受け入れません。これが、成人学習で重要なポイントとなります」
私は、この言葉をいつも忘れないようクラスに取り組んでいます。
「お互いから学ぶという環境を作る」
「そのプロセスにともに参加する」
これが、学習者主体の成人学習の醍醐味です。これはコーチとしても、大事なスタンスであることに間違いはありません。
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