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指揮者、リーダーシップ、そしてコーチ

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7月30日に、ベンジャミン・ザンダー氏を招いての講演を開催しました。
 
ボストン・フィルハーモニーの指揮者であるザンダー氏は、近年、リーダーシップについての講演をしています。

彼がリーダーシップについての講演を始めたのは、数百人の経営者に対する講演を依頼されたことがきっかけでした。そのとき彼は、自分は音楽が専門でビジネスとは無縁だから、話すことがないと一度は断ったのですが「どうしても」ということで、結局その講演を引き受けました。

ところが、彼の講演は思いのほか好評でした。彼は、何人もの経営者に、自分の会社に来て講演してほしいという依頼を受けたのです。それ以来、彼は指揮者として、リーダーシップの講演者として、そして、コーチとして活躍するようになりました。マッキンゼー、フェデックスなど、いろいろな企業で講演をしています。

彼は67歳で、とても快活です。3時間半の講演の間、スキップをし、声高らかに歌い、ピアノを弾き、カルテットをコーチします。

彼は講演のなかで、音楽をふんだんに使います。それは、彼の言葉を裏づけていきます。

ステージの上で演奏するカルテットをコーチし、その場で、音と表現を変えていきます。それは、単に音楽のコーチとしてトレーニングしているのではなく、カルテットのメンバー一人ひとりを、「可能性」のステージへと導く。つまり「正しく演奏しよう」、「間違わないように」、「誰かよりもうまく」、「悪い評価を受けないように」といった、不自由な世界からシフトして、「可能性」の世界へと連れて行くのです。

一方が、「have to」「need」「must」だとすると、もう一方は、「want to みたい」、または、「他にできること」というスタンスです。彼は、カルテットをその世界に移動させていきます。彼はそのことを「可能性への物語を創る」、その入り口まで運ぶこと、といいます。そのためには、単に頭で理解するだけでは充分ではありません。彼は、からだの動き、表情、全部に働きかけます。それは、人のあり方そのものに働きかける、コーチ本来のあり方なのでしょう。

今回のイベントには1300人の方々が参加しました。そのうち500人は、コーチ、または、コーチングを学んでいる人たちでした。
 
コーチングについては、いろいろな説が出てきています。

私は2年前に、彼の講演をきいたとき、ぜひ日本で、彼に直接コーチに話してもらいたいと思いました。なぜ今コーチングなのか? コーチングとは何か? そして、コーチとは? コーチそのものの彼に、話してもらいたいと思いました。そのメッセージは充分に伝わったように思います。音楽を通して、コーチングが実証されていくプロセスは、圧巻です。

ところで今回、彼と対談の機会をもちました。その中での彼との会話で印象に残ったことがあります。

私が「時差ぼけはありませんか?」と聞いたところ、彼は、自分に時差ぼけはないと言い切ります。そこで、「今日は何時に起きましたか?」と聞くと、「午前2時」と答えます。

「それは立派な時差ぼけじゃないですか」
「どうしてだ。その時間に目が覚めて、そこから仕事をしたり、音楽を聴いたり、とても素敵な時間を過ごした。どこが時差ぼけなんだ」
「だって、普通は午前2時には起きないでしょう。僕が時差ぼけでつらいのは、午前2時に目が覚めてしまうことなんだ」

すると、彼は言いました。
「いや、午前2時に目が覚めてしまうことが問題なのではなく、2時に目が覚めて、その後、焦ることが問題なんだ。時差ぼけで問題なのは、その焦りだけだ」

そう言われてみれば、そうなのかもしれません。万事彼は、そういうスタンスです。

また、彼はすべての人にコーチが必要だと言います。音楽の世界で、コーチのいない演奏家はいないと言います。たとえば声楽家は、自分の声があまりにも自分自身に近いところから出てくるので、自分で自分の音を捉えられないときがあります。だから、コーチが必要だと。

また、スポーツ選手、たとえば、アガシ、タイガー・ウッズなど一流の選手の名前を挙げて、「あんなに一流の人たちがコーチをつけているのに、自分たちのような凡人にコーチが不必要なわけがない」と言うのです。そして、彼は自分のコーチについて話し始めました。

6時間以上の対談は、とてもエキサイティングでした。それでいて、まるで疲れを覚えない。6時間ずっと、疲れないあり方についてコーチされたような、そんな体験でした。
 
ベンジャミン・ザンダー氏との対談の内容については、追って、ウェブ上で紹介していきたいと思います。

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