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Born to be a Coach (生まれながらのコーチ)とLearn to be a Coach (学んでコーチになる人)
コピーしました コピーに失敗しました8月上旬に、コーチ業界のリーダーが国際コーチング連盟(ICF)からの招待を受けて、カナダのバンクーバーに集合しました。そこでは、「コーチングの未来について語る:第1回コーチング・サミット」が開催されました。
第1回だけあり、参加者の顔ぶれはコーチのショールームのよう。世界各国から43名。アメリカをはじめ、カナダ、イギリス、ヨーロッパ、オーストラリア、中国、ロシアからコーチが集い、そして、日本からは私が参加しました。
今回のサミットでの話し合いの中心は文字通り「コーチングの未来について」。
ICFはもともと、「コーチ業を営む人のための職業団体」としてスタートしています。そのため、今までICFの会議では常に、「コーチたち」や「コーチ業」に焦点があてられ、「コーチング」そのものが話題になったことはあまりありませんでした。ですから、コーチングについて、そしてコーチングの未来について、話し合うことは画期的なことでした。
コーチングの未来を語ることは、つまり、コーチングの現在を浮き彫りにすることです。主な課題として話されたのは、
1.コーチングについての教育
2.コーチングに関する知識、ナレッジの共有
3.グローバルな展開
でした。中でも、とくに白熱して語られたのは、1の「コーチングについての教育」でした。
2007年度のICFの理事長で、コーチ認定委員会に所属するケイ・キャノン氏が真剣な顔をして次のように話しました。
「世の中には、2種類のコーチがいる。Born to be a Coach (生まれながらのコーチ)とLearn to be a Coach (学んでコーチになる人)。今までコーチング業界を支えてきたパイオニアコーチは、『生まれながらのコーチだった人』。その人たちに必要なのは、実績を積むための練習(トレーニング)の場でした。しかし、パイオニアではなく、今、コーチングをやりたい人たちの中には、生まれながらのコーチではない人もいる。その人たちは『学んでコーチになる人』。その人たちには、コーチングについてのトレーニングだけでなく、コーチングについての教育が必要だ。それも、『なぜ、コーチングは機能するのか』ということを学術的に理解することが不可欠。その理解がないところで、コーチングの練習だけをしてもうまくいかない」。
ケイは、コーチ認定テストの試験官として数多くの試験に携わっており、その中で、これでもコーチング? と思うようなものをたくさん聞き、目撃していると言います。それゆえ、彼女の言葉には非常に説得力があり、コーチ業界の未来の課題を明快に言語化したように感じました。
「スキルを身につければ誰でもコーチングができる」という言葉を時折聞きます。しかし、コーチングでは「相手の行動を促す」という大切な目的がありますから、「人は何ゆえに動くのか」ということを理解することが必要なのです。
「人はどのようにして物事を捉えるのか」
「人はいかに行動し、判断を下すのか」
「聞くということの重要性」
「会話とは何か」
コーチ・トゥエンティワンが提供しているコーチ・トレーニング・プログラム(以下CTP、現在のコーチ・エィ アカデミア)では、これらについて理解することをカリキュラムの初期段階に組み込んでいます。今回の会議に参加して、その重要性についてあらためて認識しました。
コーチングを理解する「教育」とコーチングを練習する「トレーニング」。これからコーチを育成し、コーチングを普及させる立場として、この両輪を同時に回していくことが非常に大事であることを、心に深く刻むことができた会議でした。
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