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リフレーズ

リフレーズ | Hello, Coaching!
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先日、久しぶりにアメリカ人のコーチングを受けました。東京からテキサスに電話をかけてのセッションです。

そのコーチングで、何よりも良かったのは、私が話すたびに、彼女が必ず"リフレーズ(言い換え)"してくれたことです。 こちらが言ったことを同じように繰り返すのではなく、少し言い方を変えて「こういうことを言いたいのですか?」と返してくる(しかも毎回!)。 またそれが絶妙で、こちらが「それそれ!」と言いたくなるような表現で返してくれます。

例えば、「身近な人とより強い関係を作りたい」と言うと、「周りの人はあなたから良い刺激を受けるし、あなたも周りの人から良い刺激を受ける、そんな関係が築きたいということですか?」 と断定するのではなく、純粋に確認をしたいというトーンで問いかけてきます。

英語で受ける久しぶりのコーチングに、最初は少し緊張して早口になっていましたが、だんだんと「じっくり考えて、ゆっくり答えて大丈夫だ、それでも彼女は聞いていてくれる」 。そんな安心感が自分の中に広がっていきました。

セッションの終わり、彼女に聞きました。
「こういうリフレーズを誰に対しても毎回しているんですか?」

彼女曰く、
「私はただ、自分が相手の世界を正確に理解できているかどうかを確認したいと思っているのよ。だから、頻繁に『この理解の仕方で合っている?』と聞くようにしているわ」

リフレーズをされると、自分が言ったことは間違いなく、相手の「生体」を通過したのだと思うことができます。相手は確かに一度、こちらの言葉を体の中に取り込んで、理解しようとしたのだ、というのが伝わってきます。

たとえ、「あっ、それはちょっと違う」という表現が返ってきたとしても、「理解しようとしている」というのは強く伝わりますから、こちらとしてはさらに話したくなるわけです。

自分の考えが明快で、迷いなく何かを伝えたときには、そのまま同じ言葉で繰り返されるのもいいものです。自分が選んだ言葉に後押しを受けるような感じがありますから。しかし、少し迷いをもって言葉を伝えたときには、同じ言葉で返されるよりも、リフレーズされた方が、自分の内的世界を理解しよう、サポートしよう、としてくれている相手が感じられて、より強い好感がもてると感じました。

このセッションの翌日の夜、高校時代の友人と食事をする機会がありました。彼は、自分から話のイニシアチブをとるタイプではありません。しかも、じっくり考えてぼそぼそと話します。ですから、沈黙はたびたび訪れます。

最初の沈黙がやってきたとき、普段の自分であれば、新しい話題を提供するところですが、この日は、リフレーズにかけました。

「今言ったことは、こういうことなんだよね?」

相手は、かすかな笑みを浮かべて、相変わらずぼそぼそとですが、また話し始めました。
    
次に沈黙がやってきたときも、またリフレーズ。 彼は、一度大きく頷いて、さらに話を続けました。こうなるともう、リフレーズ、リフレーズ、リフレーズ。

結局一緒にいた2時間、話したのはほとんど彼でした。おそるべし、リフレーズ。

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