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コーチの今の状態が伝わる
2006年09月06日
100歳以上の人(センテナリアン)を対象にインタビューをしたラジオプロデューサーが書いた本に、こんな話がありました。
人間の脳には、大脳辺縁系という感情を司る部分があり、その回路は外側に向かって開かれている。つまり、周囲の人の感情は、大脳辺縁系を通じて自分の感情に影響を与えている。
そして、周囲の人の大脳辺縁系と自分の大脳辺縁系がお互いに響きあい、共鳴し、感情を共有することを「大脳辺縁系共鳴」といいます。
著者は、センテナリアンのインタビューを繰り返す中で、あるとき、不思議な安心感や幸福感を感じるという経験をします。
それが何であるか、はじめは理解できなかったのですが、その体験の理由が知りたくなり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のトーマス・ルイス博士に会いに行きます。 そこで、自分が体験した不思議な感覚について彼に話します。
それは、安心感を感じる瞬間であると同時に、なにかコントロールを失うような、落ちていくような感じを味わう体験であったことを話すと、博士は、それがまさに「大脳辺緑系共鳴」が起こっている瞬間だったといいます。
一緒にいて、話を聞きながら、その感情を共有する。相手をコントロールしようという気持ちを放棄したときに、こうした体験が起こるそうです。
このような「大脳辺縁系共鳴」は、哺乳類動物だけに見られる、と博士はいいます。それは、相手の感情状態を察知する内なる能力です。
伝わるのは、安心感や幸福感といったポジティブな感情だけではありません。怒りや不安といった感情ももちろん伝わります。つまり、不安な人の側にいると、不安は伝わり、幸せな人の側にいれば、幸せを体験することができます。
犬が好きな人は、犬にはわかり、子どもの好きな人は、子どもには分かるわけです。
私たちは、ストレスや不快な感情をできるだけ避けたいと思うものです。したがって、どんな人と一緒にいるかはとても大事なポイントになります。
怒りっぽい人や、悲観的な人、不機嫌な人、こういう人の傍にいれば当然その影響を受けることになります。機嫌よく、穏やかで、のびのびしている人の傍にいれば、その影響を受けることができます。
以心伝心は本当にあり、それは証明されつつあるわけです。
コーチは今どんな状態でいるかがもっと大切
こうしてみると、コーチはスキルや何を言うかも大切ですが、それ以上に、今どんな状態でいるかはもっと大切なのだとわかります。自分自身が快適な状態なのか、安心しているか、ゆとりはあるか、それらがクライアントに直接伝わってしまうのですから。
コーチはモデルである必要があります。それは人間ですから、多少の波はありますが、コーチになるということは、それなりに自分の状態に責任を持とうとすることだと思います。
コーチといると、または、コーチと話すとそれだけで、いい感じになる。もし、可能であればそれを目指したいと思います。
また、マネージャーが仕事を楽しんでいて、部下のことを思っていてくれれば、部下はそういうマネージャーと一緒に仕事をしたいと思うものです。
それには、説明はいりません。以心伝心。説明する前に伝わっているからです。
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