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気分転換
コピーしました コピーに失敗しましたコーチにとって大事なことは幾つかありますが、なんといっても一番は、自分の心身の状態を良好に保つことだと思います。
こちらが安定しているからこそ、相手を刺激し動かすことができます。こちらが不安定なときは、相手から刺激されないように自身を防衛しようとしますから、コーチングの質が下がります。
そして、常日頃、自分の内側に安定を確保しようと思えば、「いつでもその気になれば気分転換できる」という自信が必要です。
今はちょっとつらいなと思っても、そのうち自分で違う気分に切り替えられる、と思っている人は、嫌な気分に「飲み込まれる」ことがありません。嫌な気分のときでも、その気分をちょっと「俯瞰して」見ることができますから。そうしたときでも、心の余裕を失わないわけです。
先日、脳科学者の池谷先生の本を読んでいたら、ストレスは自分で"終わらせる"ことができると思えば、それほどストレスにはならないが、ずっと続くと思うと非常に強いストレスになる、と書いてありました。
つまり、いつでもどこでも気分転換できると思っている人は、ストレスに強いけれど、気分転換は偶然に訪れるものだと思っている人にとっては、ストレスは長く苦しいものとなります。
さて、私は現在20人のクライアントをもっています。ほとんどが経営者または、役員です。
みなさん、大変仕事はうまくいっています。では、なぜコーチングを受けるのかと思うかもしれませんが、実際コーチングは、うまくいっていない人よりもうまくいっている人の方が受けてくださる可能性が高いのです。少なくとも経営者レベルでは。
彼らはエネルギッシュで、行動的で、さらに成長したいと思っていますから、コーチングにも興味をもつわけです。そして、彼らに共通しているのは、とても気分転換がうまいということです。
「週末には趣味で気分転換」という人は多くいますが、彼らは「毎日」とてもうまくストレスを終わらせています。
ひとりのクライアントさんは、会社を出て、一番近くの横断歩道をわたる瞬間に、完全に仕事は忘れるといいます。駅前のとても広い道をわたる横断歩道らしいのですが、それをわたっている間に、だんだんと仕事が後ろに過ぎ去っていくそうです。で、わたり終わったら、もう違う世界にいる。次期社長と目されている大手電気会社の役員です。
会社の最寄駅に着いた瞬間にネクタイを外すという方もいます。ネクタイを外すと、完全に私人になるそうです。公人ではなく。大手証券会社の役員です。
そして、彼らは家に着いたらそれぞれに没頭できる趣味をもっています。江戸の風俗について調べることだったり、ウクレレをひくことだったり、社交ダンスをすることだったり。
どうも気分転換のうまい人というのは、自分をリセットするやり方をもっているようです。その期待感、どんなに大変でも一日の終わりには、自分のストレスを終わらせることができるという期待感が、彼らの心を日中安定させます。
まずは自分でシグナルを決めてみましょう。一日の終わり、スーパーマンの着替えのように、あるシグナルで自分は変身すると決めます。
できればそのシグナルにあわせて、歩き方も、姿勢も、表情も、手の振り方もすべて変えてみます。そして、変身したら、ちょっと楽しいことを自分がするのを許してあげます。1日のトリート(ご褒美)に。
それができれば、きっとあなたは相手を刺激し動かすという行為にもっと大胆に飛び込んでいけるでしょう。
スイッチをオフにできるということがわかっているからこそ、オンにできるわけですから。
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