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共創と拡張率
コピーしました コピーに失敗しましたここ最近、「共創」ということについてずっと考えていました。というのも、「共創」をテーマにした講演をしなければならなかったからです。
「共創」という言葉は、"場"の研究者である東京大学名誉教授、清水博先生の『場と共創』という本から取った言葉です。ちなみに、清水先生による共創の定義はこうです。
「共創は、多く(複数)の人々が、共同体意識に基づいて行う創造的運動である」
講演をするには、自分の言葉にしなければいけません。2カ月近く、「共創」を自分の言葉にすべく格闘していました。
結論は、「共創」とは、チームに所属するメンバーが、それぞれの作業領域を超えて周りのメンバーの作業領域にも踏み込み、そこでお互いにサポートしたり、されたりしながら、「個々の総和以上の」アウトプットを生み出そうとしている状態ではないかと思います。
みなさんにも経験があると思いますが、ちょうど高校の文化祭の前日のような状態ですね。
友だち同士でわいわいがやがややりながら、明日の展示物や出し物の準備をしている。「それいいね!」「そんなのだめだよ!もっとこうしようぜ!」ストレートな承認やフィードバックが場に飛び交い、どんどんアイディアが形になっていく。悲壮感などみじんもなく、とにかく楽しくて場が活気づいている。
そんなときに私たちは「共創」しているという感じを味わうのではないでしょうか。そして、「共創」しているときというのは、1+1+1は単なる3で終わりません。4にも5にも、ときには6にもなります。
一方で共創がないというのは、すべての作業が頭数で割られていて、それぞれのメンバーは、自分の作業領域から決して出ないような状態です。自分のことだけをやっていればいいのだからと、他のメンバーに関心を寄せない。場には乾いた空気が流れ、作業以外の音はほとんど聞こえない。
そういうときは、決して1+1+1は3より大きくはなりません。それどころか、全体の雰囲気の重さに引きずられ、2や1になってしまうことさえあります。
1+1+1がもし5になったとすると、5÷3で約1.6の「拡張率」があったということにします。60%の+アルファがチームのメンバーのつながりによってもたらされたということです。
一方、1+1+1が2になってしまったとすると、2÷3=約0.6の「拡張率」ということになります。これは、40%のアウトプットが、なんとチームがあったことによって、減じたということです。
実はこの1カ月ぐらい、コーチング研修を実施する度に、管理職の方に問いかけました。「みなさんのチームの拡張率はどのぐらいですか?」と。結果として、1もしくは1より小さいと答える方が非常に多かったのです。
「成果主義の弊害でしょうか。自分の数字だけ上げていればいい、というような社員が最近多いような気がします」
「以前よりチームの仕事が細分化されているために、自分の仕事さえできれば後は知らないという人間が増えてしまったように思います」
そんな声が多く聞かれました。
もし、今、みなさんのチームで共創が減っているとすると、再び共創を取り戻し、拡張率を高めるにはどうすればいいでしょうか? 一朝一夕に変わることではないと思いますが、大きく2つのことが大事であると考えています。
ひとつは、リーダーが、「個人の総和」では実現できないような、大きくて魅力的なビジョンを投げかけることです。一人ひとりが、分担された作業をこなせば到達するようなゴールであれば、個々人は自分の島から出ようとはしません。
先週出版されたばかりの、日産自動車の人財開発担当部長、西澤正昭さんが書かれた『コーチングが組織(ダイバーシティ)を活かす』という本を読みました。
それを読むと、やはり日産自動車さんが復活したのは、なによりも、「有利子負債を数年でゼロにする」とか、「グローバルで100万台増産する」といったような、一瞬耳を疑うような大きくて強力なビジョンが提示され、 共創せざるを得ないような状況が社内に生まれたことが大きかったのだということがわかります。もちろん、そのビジョンの実現をリーダーである、カルロス・ゴーン社長がほんの少しの疑いもなく信じていたというのがあってこそですが。
共創を生み出すためにもうひとつ大事なのは、ビジョンを投げかけたら、「共創する」ようにメンバーにしっかりとリクエストすることです。「自分の領域だけにとどまらず、全体をうまくいかせるために、何ができるのかについて常に考え、実行してほしい」と。
日産自動車さんでは、さまざまな部署から人員を集めたクロスファンクショナルチームという、全社の課題を解決するチームを発足させたことで、このリクエストが全社に伝わりました。ラインの自分の仕事だけでなく、全社をうまくいかせるためのプロジェクトに参加してほしい、つまり「共創」をしてほしいという明確なメッセージです。
さて、みなさんのチームには、現在どのぐらい共創があるでしょうか? 拡張率はどのぐらいありますか? もし1より小さければ、数値を高めるためにどんなことができるでしょうか?
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