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誰のために質問をするか?
コピーしました コピーに失敗しましたある新聞社で研修を実施した弊社のスタッフから聞いた話です。
質問についてのセッションをしていたときに、かつては記者として勤め、現在は管理部門のスタッフをしているという参加者の方が、レクチャーに突然割って入りました。そして、少し挑みかかるように問いを発せられた。
「新聞記者として、どのように政治家や企業人に質問するか、これまでもいろいろと考えてきました。あなたがいうオープンクエスチョンもクローズドクエスチョンも、もちろん知っています。 記者がする質問とコーチがする質問は一体何が違うんですか?」
「新鮮な情報など何もない」「そのことは既に知っている」そんなことを言いたげなようすが伝わってきたそうです。
スタッフは次のように答えました。
「おそらく、記者さんは『自分のために』質問をしますよね。記事を書くために情報が欲しいですから当然です。一方コーチは自分のためではなく『相手のために』質問をします。それが一番の違いですね」
相手は一瞬目を見開いた後、深く頷いて、そして言ったそうです。「途中で止めてすみませんでした。次をお願いします」と。
一般的に、人は自分のために相手に質問をする傾向があります。例えば、学校から帰ってきた小学生の子どもに、「宿題はあるの?」「今日は先生から連絡何かない?」「手は洗った?」「テストの点数はよかった?」 といったように。これらは、子供のためというよりは、自分の情報不足を補って自分が安心するための質問です。
では、もし、子供のために質問をしようと思えばどうなるか?
「学校のことで何かお母さんに手伝えることある?」
「今日学校で一番楽しかったことは何?」
「宿題を楽しくやるには、どんな工夫ができると思う?」
全く違った質問が生まれる可能性があります。
上司も同じですね。営業報告をしにきた部下に、「本当に取れそうなのか?」「いつ先方の決済が降りるんだ?」「見積もりに間違いはないか?」と立て板に水のごとく質問するのは、上司の不安の解消が主目的となっています。
もし部下のために質問をするというスタンスをとれば、
「確実に取るために僕からサポートできることはあるか?」
「きっと多くの苦労があっただろう。どんな風にしてここまで持ってきたんだ?」
「最後の詰めで欠かせないことは何だと思う?」
「今回の成功で何を学んだ?」
こんな質問が生まれるかもしれません。
「相手のために質問をしよう」。そう思っただけで、質問は「コーチ色」に染まります。
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