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WIIFM ~ コミットメントから情熱へ
2006年11月29日
かつて私のコーチであったダグはよく言いました。
「どんなときにでも、WIIFM が大事だ」
WIIFMとは、「What's in it for me?」の頭文字をとった言葉です。
ダグは、言います。
「本当のゴールは、一見、目標と思えるようなもの、その先にある。それを見誤ってはならない。部下と面談すると、彼らはたいてい会社や組織の求める目標を、まるで自分の意志であるかのように口にする傾向がある。しかし、その目標は達成されないか、または、達成されても実感の薄いものになりやすい。必要なのは、部下個人の目標を見つけさせることなんだ」
マネージャーたちは、そのことを頭において、部下の目標設定をコーチすることが必要です。さらに、彼ら一人ひとりの目標が会社の目標とつながっているかどうかを確認します。
そのためには、部下の一人ひとりに、自分の目標は何であるかを考えさせることが必要です。そのときに大事なのが、『WIIFM』。つまり、『これをすることで、私が手にするものは何か?』ということを部下自身が考えることが求められるのです。
大事なのは、一方的に会社の目標を与えるだけでは、目標にはなかなか至らないということ。目標を達成するには、会社の目標を達成することで『WIIFM、自分は何を手にするのか?』を明確にすることが必要です。
目標設定のプロセスに『WIIFM』は不可欠なものだ。ダグはそのことを強調しました。
「『WIIFM』をスキップして、アクションプランやスケジュールを決めたとしても、目標には至らない。また、彼らに目標に対するコミットメントを求めることはできたとしても、彼らが、目標に向けて情熱を持ち込むことはない。そうすれば、目標は遠いものになってしまうだろう。重要なのは、スタッフが、頭で考えること(コミットメント)をやめて、心(情熱)で動くようになることなんだ。それが、目標を達成に向けた真の原動力だからなんだ」
ダグは、カナダやアメリカのローイング(ボート)のオリンピック強化選手のコーチで、何人かの金メダリストを育てました。現在は金融関係のエグゼクティブコーチとして活躍しています。
彼に聞いたことがあります。「オリンピックの選手にも、やっぱり『WIIFM』は必要ですか?」と。
「Absolutely! もちろんだよ。金メダルをとることで、自分が本当に何を手にするのか、何を手にしたいと思っているか、それのはっきりしていない選手で、金メダルをとった選手はいない。金メダルを取るということは、『WIIFM』をはっきりさせるプロセスでもあるんだ」
「『WIIFM』のはっきりした選手は、練習に対する姿勢も、練習の質も変わる。そして、意識が変わる。金メダルをとって当然だ、というところへシフトする」
コーチングは、行動に働きかけます。同時に、あり方にも働きかけているのです。
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