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右脳でコーチング

右脳でコーチング | Hello, Coaching!
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コーチングスキルは、私が知っているものだけでも100近くあります。チャンクダウン、チャンクアップ、リソースを活用する、リサーチさせる、大きなリクエストをする、などなど。

さて、クライアントと向き合ったときは、その相手の状態、タイプ、コーチングの進度などに合わせて、この100の中から最適なものをピックアップする必要があります。これは、考えて選んでいたのでは、とうてい間に合うものではありません。

「相手はこういう状態で、こういう背景があるだろうから、今は『第23番目のスキル-視点を変える』を使おう!」

こんなふうに、ことは進みません。瞬時に最適なものを選び出し、使う必要があります。それには、「左脳」の逐次性、論理性に頼るのはあまり得策ではありません。相手はこうでこうだから、と推論を展開していては機を逸します。「左脳」ではなく「右脳」の「ひらめき」によって、最善の策を、一瞬にして導きだす必要があります。

ところが「左脳」の介入は強力ですから、「右脳」を活用しようと思っても、そう簡単にはいきません。左脳が作り出した言葉が頭の中に充満します。

「ここは質問だろうか、それとも提案だろうか」
「フィードバックをするべきだろうか、それとも相手のリソースを引き出すべきだろうか」

このように頭の中にたくさん言葉が浮かぶと、どうしても対応が後手に回ります。刻々と変わる相手の変化や、次々とこちらに投げかけられる言葉を「捕らえる」ことができなくなるからです。そうすると、大事になるのは、いかに「左脳」がスイッチオンになるのを抑え、「右脳」が働く状態にするかです。

私は、試行錯誤を重ねた末、「右手でペンを回す」という方法を実践しています。左脳と右手はつながっていますから、右手を動かせば、左脳がそこに囚われ、余計な介入をしないだろうと考えたのです。

研修であれば、ホワイトボードマーカーを、1対1であれば、こっそり机の下でペンを、くるくると動かします。実験的にスタートさせましたが、実際にやってみると、これが驚くほど効果があります。

実は、コーチング研修のときに、参加者の前でデモンストレーションするのは、以前はあまり得意ではありませんでした。選んだ相手がこちらの想定外のことを言ってきたりすると、なんとかその場を「きれいに」収めなければいけないと焦り、頭の中がたくさんの言葉でぐちゃぐちゃになっていました。

「もっとこの人の部下のことについて聞いた方がいいだろうか」
「それとも、この人がどんなビジョンを持っているかを探った方がいいだろうか」

そうすると、相手が見えなくなり、聞けなくなり、コーチングはどんどん「どつぼ」にはまっていきました。

これが、右手にペンを持ち、くるくると回すようになってからは、心から焦りが消えました。人前であるにもかかわらず、頭の中は波を打ったように静かで、次々にコーチングのアイディアが 浮かぶようになりました。

先日、『ハイ・コンセプト(三笠書房)』という、大前研一さんが翻訳された本を読み、やはりこのやり方は間違っていなかったと確信しました。

前書きで大前さんが書いています。

「モーツァルトは、作曲する際には、余計な雑念が入らないように、妻にストーリーを読ませながら、頭に浮かんでいる音楽をそのまま譜にしたという。つまり、本を音読する妻の声で自分の左脳を占領させ、考えるということをせずに、右脳に浮かぶ音をそのまま楽譜に書き写す。このくらい左脳を殺して右脳で発想していた」

左脳でたくさんのスキルを学習し、本番では右脳のひらめきに委ねる。それがコーチングの王道かなと、最近つくづく思っています。

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