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私の考えとあなたの考えは違う
コピーしました コピーに失敗しましたコーチ・トゥエンティワンが提供しているコーチ・トレーニング・プログラム(以下CTP、現在のコーチ・エィ アカデミア)、全144時間のカリキュラム履修が終わった修了生に対し、その成果についての調査を行ないました。その結果は、非常に興味深いものでした。
まず「プログラムに参加してあなたが得た成果は何ですか?」という質問に対し、ダントツで1位になったのは、「自分にはない、新しい視点・考え方を得ることができた」という項目で、8割以上の方がYESと答えています。
ちなみに、2位から5位をご紹介すると、
2位「相手に自由に話をさせるコミュニケーション力が身についた」
3位「人の話を積極的に聞けるようになった」
4位「コミュニケーションのスキルが上がった」
5位「コーチングの幅が広がり、視点が増えた」
となりました。
CTPは、電話会議を使って運営されており、1日に約25クラスが稼動しています。そして、それぞれのクラスには、約20名の方々が参加しています。会議では、クラスコーチという進行役がテキストに沿って説明したり、質問を投げかけて、参加者からの答えを促し、コーチングのロールプレイを行ない、エクササイズを実践しながら55分のクラスを運営します。
クラスの中で、クラスコーチがひとつの投げかけをすると、他の人が、自分が想像もしないことを答えるのを聞くことがあります。
たとえば、「コーチングを学ぶ目的は何ですか?」というひとつの質問に、「コーチングをもっと深く知りたい」と自分のことを言う人もいれば、「部下の話を口を挟まずに、最後まで聞けるようになりたい」と、相手との関わりを視野に入れた具体的なことを言う人もいます。
答え方の違いを聞いて「ほー」とうなったり、他の人がコーチ役をするのを聞きながら、自分では思いつかない質問を投げかけるのに感心したり、逆に、コーチを受ける役の人が、自分とは視点の違う返事をしたりするのに驚いたり、と聞いているだけでも発想が変わる体験をします。144時間×20人ですから、最高で2,880人分の視点に触れることになります。それはまるで、人の思考レパートリーのショーケースを見ているようなものです。
実は、「人はそれぞれ考えていることが違う」ということを知り、実感することが、コーチになっていくうえで非常に大事なことなのです。
私たちは人と会話をするときに、自動的に「私とあなたは同じだ」というスタンスをとって安心を得ようとする傾向があります。そのため、なかなか質問したり、会話をすることが難しいのです。
質問をすることで、相手が自分が思っていることと違うことを言ってきたらどうしよう......。それゆえに、コーチングを学び始めたばかりの人は、「私は○○○だと思うのですが、どうですか?」と、自分のスタンスを冠につけた質問をしたり、遠まわしな質問をする傾向があります。
しかし、視点の違い、考え方の違いを多く知ると、「考えが違っていて当然。この人は一体どんな考えを持っているのだろう」という好奇心が芽生えはじめるようになり、質問のしかたも直接的になり、簡潔になります。
「どういう意味ですか?」
「よくわからないのでもう少し具体的に話してください」
「今、何を意図して話していますか」
このような質問のやりとりを、楽しんでできるようになります。
また、聞かれたほうも、自分の考えを伝えようと頭の中を整理して話すようになりますから、ちょっとした会話でも多くのことを話したような感覚を持つのです。
次にご紹介する、プログラム修了生からの感想は、多くの視点に触れることの大切さを物語っています。
・「いろいろな人と出会えたことで、『こんな考え方もあるのか』、『こんな人たちもいるのか』と、気づきを多く与えてもらった」
・「自分ひとりでは思いつかないことを、他の参加者の発言によって知ることが出来た」
・「人の話の聞き方が変わった。自分の視点、考えが、単にひとつの考えにすぎないことであると実感した」
コーチとして、効果的な質問ができるようになるために、異なる視点に数多く触れる体験を持つことが大事な要素であることに、間違いはないようです。
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