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悩む vs 考える
コピーしました コピーに失敗しました先日、演出家、鴻上尚史さんの『発声と身体のレッスン』(白水社)という本を読みました。
「正しい発声とは何か」を説くくだりで、鴻上さんは、「悩むこと」と「考えること」の違いについて言及しています。
鴻上さんは、「『悩むこと』とは、『あー、私は発声ができていない。困ったなあ。どーしよう。どーしたらいいの? ああ、今度の舞台はどうなるのー』と、ウダウダすること。(中略)『考えること』は、『さて、私は発声ができていない。じゃあ、発声ができている状態ってのは、どんな状態なんだろう。私は、誰が発声ができていると思うんだろう。あの人はどうだろう? あの人は?』と、使った時間だけ、発見や吸収があることです」と言っています。
つまり、悩むというのは、答えを手にしたいのに、その答えが手に入らず、同じところをぐるぐると回っているような状態。一方、考えるというのは、答え探すのではなく、答えに至る問いを自分の中で立てるプロセスのこと。
さて、先日、親会社から子会社に出向し、社長を務められている方のコーチングをしたときのことです。
彼は親会社で、長らく経営企画の仕事に携わっており、ある意味経営のプロです。ですから、子会社をどうすれば財務的に黒字に出来るか、という戦略作りに関しては、多くの問いを立てることができます。
「赤字事業から、どうすれば早急に撤退することができるだろうか?」
「協力会社とのコラボレーションを推進するためには、どうすればいいだろうか?」
「協力会社が求めている特典は、どういうものだろうか?」
ところが、そうやって作り上げた戦略を部下がなかなか理解しない。つまり自分の想いが社員に伝わらないといいます。こちらについては、どうも日頃悶々とし「なぜわかってくれないんだ?」と堂々巡りをしているだけで、 問いが立てられていない。だから答えが見つからない。企業戦略については「考えている」わけですが、社員にどう伝えるかについては「悩んでいる」わけです。
どうも、得意な領域については、意識的にしろ、無意識的にしろ、人は問いを立て、考えることができるようです。ところが、不得意な領域については悩んでしまう。問いを立てられないからこそ不得意になるともいえます。
仕事の能力が高い人というのは、きっと、仕事の全ての領域(戦略構築、部下育成、チームビルディング、お客様との関係向上)で問いを立てるスピードが速く、また、問いのバリエーションが多いのだと思います。
さて、あなたは、何について考え、何については悩んでいるでしょうか?
問いが立てられる領域では、実際どのような問いを立てているか棚卸ししてみてください。そして、次に、問いが立てられない領域を見つけ、そこではどのように問いを立てられるかについて、検討してみてください。
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