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~関係性の知能~ をコーチする
2007年01月31日
今回、私はニューヨーク大学で、「Relational Intelligence ~関係性の知能~ をコーチする」というタイトルで講演をしました。
どんなにすばらしい資源をもっていても、人との間に関係性を築くことができなければ、その資源は使われないままになります。アイディア、方法、情報、ネットワーク、そのいずれも、関係を築いたり改善することができなければ、使われることはないのです。
したがって、関係を築き、それをどれだけ発展させることができるかが関係性の知能であり、そのレベルを測り、それを上げることを抜きにコーチングは機能しないという考え方について話をしました。
アメリカでも、もちろん関係性は重要視されています。しかしそれ以上に、独立していることやリーダーシップが優先されます。また、人と人との関わりについても、日本とはイメージするものが違います。
たとえば、日本にはもともと「ネイチャー」にあたる日本語がなく、後日、「自然(じねん)」という言葉をあてたようです。それは、当時の日本人が、自然と自分を分けて考えていなかったからだと思います。したがって、「自然を克服する」という視点もありませんでした。
そうしたものを前提に、関係というものをとらえると、関係は単に「私」と「あなた」の中で創られるものではないことがわかります。「私」と「あなた」の関係では、早晩、限界がきてしまうわけです。
私が自然の一部であるとしたら、あなたも自然の一部ですから、そこで交わされるコミュニケーションも、私たちの一部から私たちの一部へと向けられるものになるわけです。
単にふたりの間のよい関係をどのように築くかだけではなく、全体の中での、ふたりの関わり、全体と自分との関わり、それらをどのように感じとれるかによって、 関わりの可能性が広がります。
そして私は、関わりの可能性が広がることで、個人と組織のリソースが生かされると考えています。
たとえば、離職率の高い会社の離職率を下げるためには、辞めてゆく可能性のある社員をコーチするのではなく、その上司の、関係を築く能力を上げるためのコーチングをします。その結果、上司のコミュニケーション能力が上がり、関係について持っていたイメージが変わることで、部下との接し方が変わり、実際に離職率が下がったといった事例があるのです。
こうしたケースを紹介しながら、関係性をいろいろな角度から見るという試みをしました。
こうした考え方が、アメリカにおいて理解されるかどうか少し心配でしたが、思ったよりも受け入れられ、関わりを見直し、新しい可能性をそこに見つけようとする流れを感じました。
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