Coach's VIEW

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Focus on illusion (幻想にフォーカスを当てる)

先日、医師である、友人のT先生が教えてくれました。

「『サイエンス』に載っていたんだけど、
ある人に『あなたの年収はいくらですか?』と聞いてから、
次に、『あなたは幸せですか?』と質問すると、
そこに相関性が生まれるんだよ。

それで次に、また別の人に、『あなたは幸せですか?』と聞いて、
その後、『あなたの年収は?』と質問しても、
そこには相関性はないんだって」

「なるほどね」

「同じように、『結婚していますか?』と聞いて、
それから『幸せですか?』と質問すると、
そこには相関性が生まれる。

その反対に、『幸せですか?』と聞いてから、
『結婚していますか?』と質問しても、
そこには相関性はないんだよ」

ふだん私たちは、幸せ、成功、成長、問題など、
定義のはっきりしていない言葉を数多く使っています。

いったい何をもって幸せというのか?
何をもって成功というのか?

おそらく、「いま幸せか、成長しているか、満足しているか」など、
唐突に聞かれても、大抵は答えられないのだと思います。
もちろん、その瞬間にそれと自覚できるものに
フォーカスが当たっていれば別ですが。

私たちがものごとをどのように認識するか、
それが、幸せや成功、成長などといった、茫漠としていて、
まるでイリュージョンのような場合は、いったいどうなのか?

おそらく、
最初から「幸せ」とか「成功」という言葉をもち出すよりも、
もっと具体的な事柄にフォーカスを当て、
次に抽象度の高い言葉につなぐことで、
ものごとを認識しやすくなるのでしょう。

これまでも、漠然と理解されてきたことではありますが、
そのことが証明されつつあるわけです。

このことが理解できると、
部下に向かって、「がんばれ」とか、
「ちゃんとしろ」とか、「やる気があるのか?」
などと言っても、効果がないことに気がつきます。

より自己肯定感や自己効力感を持たせるために、
部下に「仕事は楽しいか?」「どうだ。がんばっているか?」
などと聞くほうが、まだましです。

「最近、仕事でうまくいったことは何?」と質問したり、
「最近は遅くまで仕事をしているね」とアクノレッジ(承認)したりして、
その後で、「仕事は楽しいか?」と聞く方が、
ずっと効果的なことがわかります。

それが未来であれ、過去であれ、
私たちがもちたいと思うイメージや全体像は、
何にフォーカスを当てるかによって違ってきます。

問題にフォーカスを当てるのか、
または、ソリューションにフォーカスを当てるのか、
または、その結果、手にするであろうご褒美に
フォーカスを当てるのか。

どれが特に正しいわけではありません。
問題にフォーカスを当てることにも意味があり、
それがイメージを創ったり、
思考のシフトに役立つこともあります。

また、すでにあるものや、
いまできていることにフォーカスを当て、
次に、抽象度の高い「幸せ」や「成長」などに注意を向けさせると、
相手は、幸せや成長、喜び、楽しさを、
実感として持つことができるようになります。

言葉として使っている、幸せ、成長、喜び、楽しさ、愛などを
実感として持つことができるようになると、
具体的に、どのような考え方や行動をとればいいのか、
また、何にフォーカスを当てればいいのかを
自覚できるようになります。

当然、幸せや喜びを実感しながら考え、行動できている方が
可能性は広がります。また、自己効力感も強くなります。

幸福感、成長感、喜び。

これらは人が生きていくうえでの「リソース(資源)」になります。

コーチは、そのリソースに
クライアントがいかにしたらアクセスできるかを
常にテーマとしてもっています。

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