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社内コーチ

社内コーチ | Hello, Coaching!
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Aさんは、大手食品販売会社の営業部長。4年前に社内で行われたコーチング研修に参加したことがきっかけで、コーチングを学びはじめました。

コーチングに触れた最初のインパクトは、「聞くこと」の大切さと、相手を認めるための「承認」のスキルだったといいます。

最初に変化を感じたのは、目標面談の場面でのことです。Aさんは「聞く」ことだけを意識して面談に臨みました。面談を始めて15分ぐらい経った頃、相手の女性スタッフが、突然涙ぐんだのです。どうしたのか理由を尋ねると、次のようにかえってきました。
「今まで、こんなに真剣に上司に話を聞いてもらったことはありません。私、感動してるんです」

Aさんは、その反応にコーチングというものの可能性をさらに強く感じ、本格的に社内でコーチングを行うようになります。

3年前の4月の人事異動で、35歳の平社員が自分の部下になりました。35歳で平社員というのはだいぶ遅れている。Aさんは、よっぽどやる気がないんだろうとは思ったものの、念のために本人にどう思っているのかを聞いてみることにしました。

すると、本当はマネージャーとして活躍したいというのです。実際に話を聞いていると能力的に劣っているようにも見えない。そこで、Aさんはその部下をコーチすることを買って出ました。コーチングを開始したのは5月。半年後の11月には主任に昇進。翌年の2月には何人もの同期を抜いて課長へ抜擢されました。

Aさんにどのようなコーチングをしたのかを聞きました。

「彼を承認しようと思ったんです。仕事や役割を任せるのが最高の承認だと思ったので、ミーティングの進行やイベントの責任者など、彼ができることはもちろん、少し難しそうなことも思い切って任せるようにしたんです。最初は自信なさげだった彼ですが、一つひとつクリアするにつれてどんどん輝きが増していった。その活躍が上層部の目に留まって、彼は抜擢されたんです」

Aさんはこのコーチングをきっかけに、「社内コーチ」として活躍するようになります。

2年前、関連の食品メーカーが新商品を開発しました。販社としては当然その商品を売らなければなりません。ところが、その商品は今まで扱っている商品に比べて、飛びぬけて単価が高い。ほとんど全員の営業部員がその商品を売りたがらない。1ヶ月間のキャンペーンで売れた数は全社でたったの300個。営業部員1人あたりにすると約1個、売上にして100万円弱という散々な結果でした。

ところが翌年、メーカーの意向で、同じキャンペーンを行うことになったのです。販社としては、2年連続で失敗するわけにはいきません。そこで10名のマネージャーが、キーになるベテランの営業部員に対して一人ひとりひざ詰めで、販売促進のお願いをすることが決まりました。

社内コーチとしてAさんは、マネージャーに対して、最初からお願いするのではなく、最初の15分間は営業部員の話に耳を傾け、ひたすら聞くことを徹底しました。

結果としてベテランの営業部員たちは、販売促進のキャンペーンを快く引き受けたのです。中にはひとりで月に70個以上販売するような大活躍をする営業部員も現れ、それに影響されて、若手の営業部員も売上を伸ばしました。キャンペーン期間の売上は、金額にして約600万円。前年の7倍という数字をあげたのです。

Aさんは現在、財団法人生涯学習開発財団の認定コーチの資格を取得し、会社全体へのコーチング推進に取り組んでいます。

「近い将来、社内コーチの制度を自社に行き渡らせたいですね。そして、定年退職したら、独立してプロのビジネスコーチをやるのが私の夢なんです」

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