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コーチングとは『聞く』こと その2

私が小学2年生のとき、久保田先生が理科の先生でした。
理科の時間はクラスのおしゃべりが絶えず、
とてもうるさい授業でした。
ある日、久保田先生はささやくような声で授業を始めました。
「今日は風邪をひいて声が出ないので、この声で授業します」
私たちは一言も聞き漏らすまいと必死でした。
いまだかつてないほどの静かさの中で授業は進行していきました。
終業ベルが鳴る2分前になると、
先生はおもむろに大声で話し始めました。
「いや~みんな聞けるじゃない。
いつもうるさいから、誰も聞けないんじゃないかと思っていて
実験してみたんだ。できるんだ~
だまされた、という後味の悪さは残りましたが、
そのときの「集中して人の話を聞いた体験」は、
今でも忘れることができません。
声のトーンはどうか?
何を話そうとしているのか?
顔の表情は?
具合は良さそうか、それとも悪そうか?
みんなも一緒に聞いているか?
全神経を集中させて聞いたあの45分のことをよく思い出します。
コーチのコンピテンシー(職能)で大切なのは、「聞く」ことです。
国際コーチング連盟は、聞くことについて次のように掲げています。
【アクティブリスニングができる】
クライアントが話していることと、言語外にあることの両方に
耳を傾けており、クライアントが自己表現できるよう援助する
これには各種レベルがあり、聞くスキルはレベルアップしていきます。
最高レベルのマスター認定コーチには、下記のようなスキルが要求されます。
◆ マスター認定コーチレベル
論理的、感情的、物理的なレベルで同時並行で聞いている。
コーチは「今」聞こえていることに耳を傾けているが、
それが未来にどのようにつながるかを認識して聞いている。
国際コーチング連盟で認定試験官を務めるマーガレット・クリグバウム氏は、
自分が理解できないにもかかわらず、韓国語による口頭試験を、
韓国人と組んで行っています。
試験後の結果のすり合わせ時には、
「効果的な質問は2回あった」
「最初はこう言っていたけれど、最後はこうなった」
など、言葉を理解しなくても聞き分けることができる、
マスター中のマスターコーチです。
わたしは、コーチとしてのトレーニングを始めて、
自分がただ鼓膜を震わせていただけで、
いかに人の話を「聞いていないか」ということを実感しました。
コーチ・トレーニング・プログラム(CTP)では、
「聞くスキル」を棚卸しするテストがあります。
下記のチェックリストを使って、あなたがどれくらい聞いているか
チェックしてみてください。同時に、周りの人にもチェックして
もらって、あなたの聞くスキルについて聞いてみてください。
聞く、ということに取り組むだけで、
そこで交わされるコミュニケーションの量と質に
大きな変化が現れることを実感することと思います。
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