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アドバイスしない

アドバイスしない | Hello, Coaching!
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コーチングにはいくつもの定義があります。その代表的なものに「コーチはアドバイスしない」があります。

親は子供にアドバイスをします。上司は部下に。しかし、コーチはアドバイスをしません。アドバイスをせずにコミュニケーションを交わし、クライアントの目標達成に貢献するのです。

もちろん、コーチには知識、経験、価値観があり、それを伝授したいという気持ちに駆られることもあります。しかし、そこでアドバイスをしてしまえば、それはもはやコーチングではなくなってしまいます。

わざわざコーチングというジャンルをもち、コーチングをするからには、コーチングに私たちが期待しているものがあります。それは、自分でものを考え、自分で判断し、目標に向けてプランを立て、自分から行動を起こし、行動に修正を加えながら目標に到達する、そういう人材の育成です。

組織の中で、コーチングだけを実践するのは難しい面があります。例えば、部下がアドバイスを求めてきたときに、そこでコーチングをするのは時間の無駄であり、生産性を低下させます。

以前、講演先の病院でひとりの医師から質問を受けました。
「患者さんの容態が急変した、そういう緊急時も、担当医にアドバイスせずにコーチするんですか?」
「そうしますか?」
「そんなことをしたら、命にかかわりますよ」
「そうですね、それではどうしますか?」
「もちろん、指示命令です」
「私もそうすると思います」
「でも、指示命令はいけないとおしゃいましたが」
「場合によっては機能しないんです。しかし、機能する場面もあります。それを使い分ける必要があります」

コーチングは万能ではありません。ですから、コーチングが機能する場面の設定が必要になります。例えば入社したばかりの新入社員には、ティーチング(教えること)が必要です。また、彼らにはメンター(指導者)がつくのが望ましいでしょう。

部署が変わる、新しい役割につく、部下育成が仕事の中に加わる、新しい技術やコンピタンシー(職能)を身につける、大きな変化に対応する、明確な目標を決まった時間内に達成する、などの目的に、コーチングは機能します。

例えば「IR(Investor Relations:企業による投資家に対する広報活動)」において、担当者が「いかにプレゼンテーションを行うか」をコーチングする際も、アドバイスはしません。アドバイスしてしまうと、もっとも肝心な状況対応能力を奪うでしょうし、そこから先の発展も望めません。

営業マンがプレゼンテーションをする前後や、マネージャーが部下の面談をする前後にコーチングする場合も同様です。会議の運営をコーチングすることもあります。

また、コーチングスキルを効果的に習得するためのコーチングも機能します。

単にコーチングするわけではありません。

何についてコーチングするか、クライアントとコーチの両方が理解していてはじめて、コーチングは使われます。目的はシンプルです。そこにいち早く行き着くことです。また、より遠くに行かれるようになることです。

アドバイスは、その妨げになります。なぜなら、その考え方、その行動の本当の意味を知らないために、再生産がきかなくなるからです。また、新しい視点、考え方、行動を生み出すプロセスを手にすることもありません。やはり自分で考える間が必要なのだと思います。

誰かと話すときに、アドバイスしない。そうすると、また別の視点が生まれることに気がつきます。

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