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わかったつもりにならない

わかったつもりにならない | Hello, Coaching!
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先日、弊社に中途採用の社員が入社しました。前職はコンサルタントです。本人曰く、大企業の経営陣を相手に、鋭い提案を数多く投げかけてきたとのこと。

その彼から聞かれました。
「鈴木さん、コーチングで最も大事なことはなんですか?」

何と答えるべきか一瞬迷いましたが、彼の状況を鑑み、次のように答えました。
「わかったつもりにならないことですね」
「わかったつもりにならない?」
「はい。わかってしまうとそれ以上聞き様がないじゃないですか。どれだけ長く目の前の人のことをわからないでいられるか、それがコーチとしては大事だと思うんです」

いかに早く相手の状況を正確に「わかる」かを仕事としてきた彼にとって、これはカルチャーショックだったようです。

改めて言うまでもなく、コーチはできる限り深く、広く、クライアントのことを知りたい。クライアントのビジョン、価値感、反応パターン。わかってしまえば、それ以上のものは知ることができないわけですから、できる限りわかることをホールドしたい(差し控えたい)。

ところが、人間というのは、一般的に、短時間で相手をわかろうとする傾向があります。一説によれば、誰かと初対面で向き合うと、約30秒で目の前の人が どのような人であるか、ある程度のジャッジを下すそうです。

人にとって人は最大の協力者でありますが、最も危険な存在でもあります。昨今、社会面で報道されるさまざまな事件を顧みるまでもなく、人は人に対して、物理的にも精神的にも危害を加えうる存在です。だから、自分を守るためにも、短時間のうちに、目の前にいる人がどのような人であるかを把握しようとする傾向が人にはあります。 安全か、危険か。自分と合うか、合わないか。自分よりも優れているか、劣っているか。良い悪いの問題ではなく、生き残りをかけてジャッジをする習性を人は持っています。

この習性と、わかったつもりにどこまでもならないというのは、相反する指向性です。

元コンサルタントの弊社社員のみならず、プロのコーチになろうと思えば、誰しもが最初にぶつかる壁でもあります。

彼から聞かれました。
「では、どうすれば、わかったつもりにならないことができるでしょうか?」
「わかり尽くしてしまうなんていうことはないんだと、認識することですかね。どんなにわかっても、わからないことはまだあるとそうすれば、『問い』はいくらでも湧いて出てきますから」

彼はコーチングのトレーニング真っ最中です。

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