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マイナスの結果を乗り越える

マイナスの結果を乗り越える | Hello, Coaching!
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人の行動が未来にわたって繰り返し起こるかどうかは、「ABC」によって決定される、という理論があります。

Aは、Antecedentsの頭文字で、日本語にすれば先行要因。もっとわかりやすくいえば、「きっかけ」です。

Bは、Behaviorを表し、「行動」。

Cは、Consequencesで、後発要因。行動の「結果」です。

つまり、ある「きっかけ」があって、特定の「行動」が起き、その行動の「結果」がどういうものかによって、未来の「行動の反復性」に影響を及ぼすということです。

ということは、どんなに強いきっかけがあっても、行動の結果如何で、その行動は消え去ってしまう可能性があります。

行動の結果、
1.プラスが出れば、その行動は「強化」されます。
2.マイナスが消えても、強化。

逆に、
3.マイナスが出れば、行動は「弱化」。つまり起きなくなります。
4.プラスもマイナスも出なくても、弱化します。

ABCの主な類型は、この4パターンです。

「コーチング」という行動が継続するかどうかも、ABCに当てはめて考えることができます。

研修などに参加して、「これからはコーチングだ! 現場に戻ったら、早速部下を相手に実践してみよう!」と心に決める。研修はきっかけとして機能したわけです。で、現場で実際に試してみる。結果、部下がこんな風に言ってくれます。「話をしただけで、自分が何をやるべきかとても整理されました。がんばります!」「プラスが出た」(1のパターン)わけですから、行動は再び起きます。

あるいは、いつも不平や不満をぶつけてくる部下の話を、遮らずにじっくり聞いてみたら、部下があまりネガティブな話をしなくなった。これは「マイナスが消えた」(2のパターン)ことになり、やはり行動は継続されます。

この2つのいずれかが起これば万々歳です。ところが必ずしもそうはいきません。

一生懸命、部下の話に耳を傾け、意見を求め、承認の言葉を投げかけた。ところが部下は、「どうしたんですか急に。いつもと違いますよ。研修かなんかで影響されたんじゃないですか。こうしろって言ってくれた方がやりやすいですよ」 。行動の結果として、「マイナスが出た」(3のパターン)ことになりますから、残念ながら、再び行動が起きる可能性は、かなり下がります。

あるいは、必死になって、部下をコーチングしたのに、どうも部下は良いでも悪いでもない。何のコメントもしてくれなければ、何の変化も見せることがない。世界は不変(4のパターン)。やはり、行動の反復の可能性は下がります。

どんなに強いきっかけに巡り合い、固く実践を誓っても、わずか2~3回の実践の結果が「マイナスの出現」か「不変」であれば、行動の反復の可能性はかなり下がってしまいます。ではどうすればいいでしょうか。

コーチングの実践に限らず「新しい行動を習慣化する」ときには、次のように意識することが大事です。

・特に新しい行動の「反復」は、その結果に影響されやすいものだということを理解しておく(つまり3や4が起きれば決意はゆらぎやすいと予め認識しておく)

・2~3回の行動の結果で、「や~めた」とならないように、最低10回ぐらいは、統計を取るようなつもりで、やり続けると最初から決めておく。

・「マイナスが出た」り、「不変」のときには、すぐに誰かと話す。そして、気持ちを軽くしたり、どのような行動のマイナーチェンジが必要か明らかにしたりする。

・直近の結果に影響されないように、その行動を実践し続けることで、将来的に何を手にするのか、ビジョンを明らかにしておく(ビジョンがはっきりしていれば、直近の結果に一喜一憂しません) 。

営業マンが、断られても断られても営業を続けられたり、スポーツ選手が、失敗をしても練習を続けられたりするのも、こうしたことを意識できているからではないか、と思ったりします。

いかに、「マイナスの出現」と「不変」に対応する術(すべ)を身につけているかが、自分が決めたことを実践するうえでは肝要です。同時に、誰かが決めたことを実践するのをサポートするようなとき、つまりコーチするときも、このことについて理解しておくと良いでしょう。

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