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コーチの質問

コーチの質問 | Hello, Coaching!
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以前、知人に紹介された英語の先生に、どんな教え方をするのか尋ねたことがあります。

彼は、そこにあったペンを取り上げて言いました。
「私は、ペンを持って "What is this?" なんて聞きません」
「はあ」
「だって、見てわかるでしょう。これはペンだって。わざわざ聞いたりしないんですよ、見てわかるものを」
「それはそうだね。僕は中学で、真顔で答えさせられたけどね」
「まあ、英語の構文を覚えさせるためにそうしたんだろうけど、それにしても効率が悪い」
「君はどうするの?」

すると、彼は後ろ手に何かを持って聞きました。
「今、何を持っていると思う?」
「え? うーんとね、消しゴム」
「№」
「ヒント!」
「こんな風にやるんです。興味をひき、自由に連想させ、考えることの楽しさを経験し、そして、答えに向かわせる。そして、どんな答えであっても、それを評価しない」

ご存知のように、コーチングにおけるコミュニケーションの特徴は「質問」にあります。だからといってどんな質問でも機能するわけではありません。もちろん、答えを誘導するものであったり、質問という名を借りて相手を責めるような内容であったりすれば、それが機能しないことはわかります。 しかし、書店に並ぶたくさんのコーチングの本の中で紹介されている質問の事例は、一方で誘導を否定しているにもかかわらず、結果的に誘導になってしまっているものも少なくありません。

基本的に、質問はその場で創造されるものですが、コーチは事前に、前提となる概念を学んでおく必要があります。

クライアントをよりよく知り、理解するための質問。そして、クライアントの使う言葉を理解するための質問があります。それは、コーチがクライアントについて知ると同時に、クライアントの自己認識を深めることの役に立つでしょう。

「今の仕事について何年になりますか?」
「これまで手がけてきた仕事について教えてください」

コーチは、相手の能力や可能性、強みを引き出すと言われますが、実際に、強みや可能性は、クライアントと環境の関係の中で相互作用を起こし、そこに表現されていくわけですから、私自身は、単純に「コーチが能力を引き出す」とは言いにくいと思っています。

むしろ、今のクライアントをとりまく環境について、環境に対する働きかけ、環境の選択など、これらについての質問が優先すると考えています。

たとえば、クライアントが問題を抱えているとき、コーチが問題そのものを扱うことはありません。それよりは、クライアントが問題とどれだけ直面できているか、どれだけ視点を変えることができるか、また、その問題を解決する必要性や優先度について質問します。問題が「問題」なのは、自分自身が何が問題なのかわからないことが、問題のほとんどですから。

したがって、私はコーチングの際に、次のようなありがちな質問をすることはあまりありません。

「今やるべきことが3つあるとしたら、何でしょうか?」
「なぜ今の仕事を選んだのかな?」
「いつまでにそれをやりますか?」
「今、仕事にどのぐらい満足している?」

ときに、たったひとつの質問でも、仕事や人生にイノベーションをもたらすことがあります。

私のコーチは、ときどき私に聞きます。
「あなたって、どんな人?」

何度聞かれても、新鮮です。自分に対しても、いい質問をしている人と、そうでない人とでは生き方も違ってくるであろうことは、想像がつきます。

「あなたは、自分にどんな質問をしますか?」
それから、
「さて、今私が後ろ手にもっているものは何でしょう?」

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