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聞くレッスン
コピーしました コピーに失敗しましたコーチのコア・コンピテンシー(核となる職能)の中で、「アクティブ・リスニング(能動的に聞く)」というのがあります(国際コーチング連盟のCoaching Core Competenciesより)。
すなわち、コーチは「聞く」ことがコア・コンピテンシーとして挙げられているわけですが、実際のところ、私たちは「聞く」という行為をどのように捉えているのでしょうか?
「話を聞きましょう」という言葉は、あまり日常では耳にしません。
その代わりに私たちが口にするのは、
「話を聞いてあげる」
「相手の言っていることを聞く」
あるいは、
「黙って聞く」
「我慢して聞く」
などで、「聞く」という行為に、私たちが無意識に加えている解釈があります。それは、「聞く」というのは、相手の言うことや話を聞くことであり、「話す」ことより受身的で、相手より下位の立場になる、ということです。
「聞く」という行為の難しさ
CTP(コーチ・トレーニング・プログラム、現在のコーチ・エィ アカデミア)に参加して間もない受講生が最初に直面するのは、この「聞く」という行為の難しさです。
2人組になって5分間、「相手の話を聞く練習」をするときも、沈黙が怖くてしゃべり続けるか、逆に黙ってしまい、次にどうしたらいいかわからなくなるという状態になります。それは、「聞く」ということを今までほとんどトレーニングされたことがないことを証明しています。
相手に話をさせ、自分はそれを聞く。言葉にすると簡単なようですが、難しいことです。
私が敬愛するコーチたちは、実に「聞く達人」です。彼らと接していると、「聞く」というのは、「耳をすます」行為であるのを実感します。彼らと話していると、「私から、色んなことが聞こえてくるんだろうな」と感じるのです。それは音楽を聞きながら、メロディーラインやベースライン、作曲家の意図などを聞き分けているのと、どこか似ています。
彼らは、話し手の、
- ものごとの捉え方
- 価値観
- 興味の対象
- 課題にしていること
- 好きなこと
- 苦手なこと
- 欲求
- 強み
などを、
- 使っている言葉
- 話すスピード
- 表情
- ボディランゲージ
- 行動のパターン
など、さまざまなインターフェースから捉えています。そして、それを話し手に返します。
話し手は、自分が表現していることが正確に返ってくることで、無意識だったことが意識化されて、明確になるという体験があります。これは、コーチと会話をした人ならば、誰でも経験することでしょう。
「聞く」スキルはどうやって身につけるのか
では、この「聞く」スキルはどうやって身につけるのか。それは、楽器と同様、練習が必要です。
以下に、簡単な練習メニューをご紹介します。この1週間で次のことに取り組んでみてください。
- 通勤電車やバスの中で目を閉じ、聞こえてくる音に耳をすます
- 1日に1回は、会話の中で、話すことではなく聞くことに最大限のエネルギーを傾ける
- 「話を聞く達人」の特長に注目する
- 「あなたはこう言っているように『聞こえますが』......」という言葉を使う
- 意識的に「黙る」
コーチングセッションはもちろんのこと、目標面談、面接、インタビュー、会議など、「聞く」ことが重視される場面はたくさんあります。
このレッスンをすることで、1週間後のあなたの耳に聞こえることが違ってくることを実感するはずです。
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