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内発的動機
コピーしました コピーに失敗しましたご存知の方も多いと思いますが、バイオリンの指導の仕方で、鈴木慎一さんという方が始められた「鈴木メソッド」という教授法があります。
3歳、4歳の子どもがバイオリンを習いに来ると、その子どもたちにすぐ教えずに、まず親にバイオリンを習わせます。親たちが一生懸命になって楽しくバイオリンを習う姿を、子どもたちに見せるためです。
子どもたちは、自分の親が喜々として習う様子を見て、「自分もやってみたい」と思うようになります。それでも、すぐには子どもたちにバイオリンを触らせない。
「本当に弾きたい!」という気持ちが内側から湧き出てくるまで、待つそうです。そして、ついにその時が訪れたときに、一気に教える。そうすると、もう、スポンジに水がしみ込むかのように、子どもたちはものすごく速いスピードでバイオリンの弾き方を吸収するといいます。3歳、4歳でバッハやモーツァルトが弾けるようになるケースもあるそうです。強制して無理矢理外側から力をかけるのではなく、内側に力が生まれるように仕掛けるわけです。
音楽ではなく、スポーツで最近これと似たような指導場面に、自分自身が遭遇しました。
私は中学から大学までの10年間、ラグビーをやっていました。社会人になってからはとんとご無沙汰していたのですが、先日来、ラグビーのワールドカップを見ていて(「そんなのやっていたの?」なんて言わないでくださいね)、久しぶりに「ラグビーをやってみたい!」と思うようになりました。
今年で40歳になりますが、激しいコンタクトプレーをするラグビーができるのは、せいぜい後10年。ここで再開しなければもう一生やらないだろうと思い、インターネットで自宅近くにあるラグビーのクラブを探し当て、思い切って入部しました。
このクラブには子ども、大人、それぞれ50人、合計100人ほどが参加しています。
30歳前半から上は60近い年齢の方まで、大人のチームは本当に楽しそうに、少年のような瞳を輝かせて楕円のボールを追っています。
その横で、主に大人チームのメンバーの子息、幼稚園から小学校6年までの子どもたちが、いくつかのチームに分かれ、これまたとても楽しそうにラグビーをやっている。そこには、やらせる大人、やらされる子どもという図式が全くありません。
おそらく子どもたちは、大人が喜色満面にボールを追う姿を見て、それに触発されてボールを追っているのでしょう。モデルを横に感じながら思い切って体を動かしている。
子どもたちへの指導は特に厳しいわけではないですが、子どもたちはコーチが笛を吹けば、すぐに集まり、話に耳を傾け、そして新しい技術の習得にとても熱心に取り組んでいます。ああしろ、こうしろの強制はほとんどないのに、子どもたちは、まさに自発的にうまくなろうとしている。ここにも「鈴木メソッド」がある、そんな風に思いました。
企業の中では、ややもすると、新人に、とにかく洪水のように情報を流し込み、習得を促します。ひょっとすると、それによって、新人たちの「自分から学びたい」という気持ちが少しそがれるのかもしれません。
「鈴木メソッド」を企業の中でどう実践できるか、はっきりした解があるわけではありません。ただ、自分の会社に入ってきた新人を、どうすれば「内発的に」動機付けて、学習意欲を向上させることができるのか、一度考えてみる価値はあるかもしれません。
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