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ヒューマンモーメント
2007年11月28日
デジタル思考とは、コンピューターの演算と同じ。010101......つまり、正しい/間違っている、勝ち/負け、損/得、知っている/知らない。このように二極化した考え方がデジタル思考です。
一方、アナログ思考とは、ふたつに分けるのではなく、もう少しトータルに全体を見ていく考え方といっていいでしょう。
会社のように人がたくさん集まっているところでは、デジタルな考え方が優位になります。なぜなら、その方がわかりやすいですから。この社員の能力は高いか/低いか、また、目標を達成するか/しないか、利益は上がっているか/上がっていないか。ほとんどの価値は、デジタル思考によって測られています。
しかし、一方で、人はデジタル的に割り出された価値だけではなく、計測できない価値を求めています。たとえば、私たちは人との関わりに、上/下、優/劣、勝ち/負けなど、デジタルな判断だけを求めているわけではありません。誰しも、人との関わりに「人間らしい関わり」を求めています。つまり、human moment(ヒューマンモーメント)。
コミュニケーションを交わしていて、頭と頭、言葉と言葉だけのやり取りが続くと、目の前にいる人が「生きている」ことや「生身の人間」であることを忘れていることがあります。生身の人間というのは、人が頭で想像するように行動したり、感じたり、考えたりするわけではありません。私たちはまだまだ、人間について理解していないところがたくさんあります。
また、デジタルに切り捨てられた、アナログの部分にたくさんの可能性があります。
コーチングをしていると、ゴールの達成や目標管理について話をするため、人が人との関わりに何を求めているかを忘れてしまうことがあります。確かに、基本的に話したいのは、デジタルなことなのです。しかし、コーチは単に、外部の目標管理担当者ではありません。また、行動の監視者でもない。約束を遂行させる係でもない。人間らしい関わりを忘れてしまうと、結局、肝心なデジタルな部分を機能させることができなくなるという矛盾が生じます。 「人間らしい関わり」が大事にされていないと、デジタルの部分を大胆に扱えないのです。
「人間らしさ」
それは、単にヒューマニスティックな捉え方を言っているわけではありません。もっと簡単なこと。
たとえば睡眠不足の時に、思考はあまり働かない。お腹がすいているときは、怒りっぽくなる。家庭で問題があれば、やはりそれは仕事に影響する、など。
それから、その人は、いま何を求めているのかに意識を向ける。コミュニケーションの目的は、自分の要望を伝えること、そして、相手の求めるものを知ることにあります。
相手の求めているものを知るためには、デジタル的な価値と同時に、アナログ的な価値、つまりヒューマンモーメントがあることに気づきながら、コミュニケーションを交わすのだと思います。だからといって、そこに親密さがあれば、すべてがうまくいくということもありません。
どちらが重要、ということが言いたいのではありません。大切なのは、デジタルとアナログのバランスがとれていること。
どちらにも極端に偏らないことです。
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