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セルフトークマネジメント
コピーしました コピーに失敗しましたエグゼクティブのコーチングをしていて、意外に多いテーマが、いかに「社員の前で」緊張せずに話すかというものです。
一見ぱりっとした人でも、
「実はさ、結構社員の前で話すの緊張するんだよね。外で講演する機会もあって、そっちはいいんだけどね。なんでだろうね?」
私自身も、身に覚えがあります。
「それは、身内だからですよ。身内だから、基本的には良い反応を返して欲しいわけだけれども、聞く側は、身内であるから逆にあまり良い顔をして聞かない。だから、こちらは『あれ??』みたいな感じになるんじゃないですかね」
「そうかあ。でも、やっぱり身内の前でもぱりっと話したいよね。どうしたらいいのかな?」
そこで、身内の前で話すときに、「自分の中にどんな言葉が生まれるのか」を聞いてみました。
話す前になると、
「また緊張したらいやだな」
「格好悪いな」
「話が受けなかったらみっともない」
そんな言葉が溢れてきてしまうとのことでした。
こうした自分の中に湧き起こる独り言を、「セルフトーク」といいます。
どうも、目の前の人の反応そのものに影響を受けているというよりは、この自分で作り出したセルフトークに「やられて」しまっているようです。
セルフトークの内容が変われば平然としていられるのか
ということは、セルフトークの内容が変われば、たとえ部下の反応が良くなくても、彼は平然としていられるということになります。そこで、聞きました。
「社員に話す前は、毎回緊張するんですか?」
「いや毎回ではないよね。たまにすっと入っていかれるときもある」
「そのときは、どんな言葉が浮かぶんですか?」
「『まっ、いいか』っていう感じかな」
「どうにでもなれっていうことですか?」
「そうそう。『まっ、緊張しても死ぬわけじゃないだろ』そんな感じかな」
「『緊張してもいいか』『汗かいてもいいか』『多少震えてもいいか』そんな感じなんですね」
「そうだね」
「だとしたら、逆手にとって、最初からそう自分に語りかけるのはどうでしょう?少し誇張をして。『緊張しろ!』『汗をかけ!』『手よ震えろ!』と」
「???」
実は、否定文には、否定している対象を呼び起こす力があります。
否定文を作る際には、否定されているものを実際に思い浮かべないと言葉にできません。
例えば、絶対にサルを思い浮かべるな、と言われると、反射的にサルを思い浮かべてしまいます。ですから、否定文を使えば使うほど、否定している内容が頭に浮かび、よりその強度が強まります。「緊張したらいやだな」「緊張してはいけない」と自分に言えば言うほど、緊張が高まるわけです。
これを逆手にとって、最初からそのような指示を内側で自分に与えます。
緊張している自分を誇張して描くことで、自分を客観的にみることができ、それが「おかしさ」を引き起こし、緊張のレベルを下げます。
前述のエグゼクティブは、次に社員に話す機会にこの手法を試しました。
「汗よ噴き出せ! 手よガタガタと震えろ!」
リアルにイメージした自分がとてもおかしく、すっかり緊張が下がり、普通に話すことができたそうです。
「セルフトークマネジメント」
自分の内側の言葉をマネジメントし、パフォーマンスを高める。これを「セルフトークマネジメント」と言います。
否定語をあえて使う以外にも、さまざまな手法があります。
クライアントの方々に、セルフトークマネジメントに長けていただくことは、私たちコーチの大きな役割の一つだと思っています。
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