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フィッシュ!
コピーしました コピーに失敗しました4月24日の毎日新聞に、とても興味深い記事が載っていました。
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「褒められる気分はお金をもらうのと同じ」
(24日付けの脳科学専門誌「ニューロン」)
人は褒められた時と、現金などの報酬を受け取った時、脳の中では同じ反応が起こっている。
つまり人にとって褒められることは、金銭や食物と同様の「報酬」として、脳内で処理されていることが明らかになった。
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だいぶ前のことですが、イルカの調教について聞いたことがあります。
どのようにイルカに芸を教えるのか。
まだ調教を受けたことのないイルカがいます。イルカはご存知の通り遊び好きなので、人間に寄ってきて、いろいろなことをするらしい。
例えば、突然ジャンプする。調教師はすかさず「フィッシュ!」といって餌を与える。またジャンプすると「フィッシュ!」。繰り返すうちに、イルカはジャンプすれば餌をもらえるとわかる。すると、イルカはどんどんジャンプをし始めるそうです。
ところが、今度はジャンプしても餌を与えない。イルカは、餌が欲しくて狂ったようにジャンプをする。でもやらない。
何かの拍子にイルカが回転する。そうすると「フィッシュ!」。回転すると「フィッシュ!」。
繰り返すうちに、イルカは回転すると「フィッシュ!」がもらえることに気づく。そして、イルカのすごいところは、これを繰り返すうちに、何か新しいことをすると「フィッシュ!」がもらえることに突然気づくらしい。そのことに気づいたイルカは、飛んだり、回ったり、尾ひれで立ち上がったりと、創造的な動きを始めるというのです。
イルカの調教師は、芸を「教え」てはいない。イルカをコーチしている。「フィッシュ!」というイルカにとっての「承認」によって、方向性を示しているのです。
人をイルカに例えるのは失礼とは思いますが、部下に方向性を示すために行う、タイミングのよい「承認」は、想像以上に大切なことなのかもしれません。つまり「承認」されることが、人にとってお金や食べ物と同じように認識されているなら、そのインパクトについて改めて考え直す必要がありそうです。
ところが、人間はイルカほど単純ではありません。イルカにとっては「フィッシュ!(餌)」はとてもわかりやすい承認ですが、人はそれぞれ「報酬」と感じる「承認」が違うからです。
何人かの部下に聞いてみました。どういうときに「承認」されたと感じるか?
「仕事の成果を認められたとき」
「『ありがとう』と言われたとき」
「『助かってる』と言われるとやる気になる」
「どんな些細なことでも、気づいてもらえると嬉しい」
「よく見ていてくれて、『がんばってるね』と声をかけられるだけで嬉しい」
「事実を認めてほしい。『すごい』と言われるのは嫌」
「人と比較して、優れているところを褒めて欲しい」
「『この仕事は君に任せるよ』と言われると嬉しい」
「報告をしに行ったときには、必ず褒めて欲しい」
「人前で褒められるのは嫌なので、そっと褒めて欲しい」
「『君、営業向いてるよ』と言われてすごく嬉しかった」
「毎日褒めてほしい」
人によって、もらいたい「フィッシュ!」は違います。
そして、何よりも大切なのは、上司が一人ひとりの部下の成長に向けて、いつ、何に対して、どのようなタイミングで「承認」をするのか。部下の創造性を引き出すための戦略を持っていることなのだと思うのです。
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